樋口新葉、藤本那菜の挑戦
挑み続けてきたのは2人にとどまらない。
選手たちはオリンピックに出場するために、懸命の努力を重ねてきた。
フィギュアスケートの樋口新葉は、2017-2018シーズン、グランプリシリーズで活躍するなど代表有力候補とされていた。だが全日本選手権で4位。目の前にあったはずの切符を手にすることができなかった。あれから4年、樋口はトリプルアクセルを組み入れたプログラムで、激戦の中、全日本選手権2位となり、代表をつかんだ。
トリプルアクセルという武器を身につけるのも挑戦と言えたが、それだけではない。
「4年前は勝つことだけを考え、すごく狭い気持ちの中でスケートに向かっていて、スケート本来の楽しさや面白さを感じられないまま過ごしていました。この1、2年はスケートに向き合って、すごくスケートが楽しい。辛いことはたくさんありますし、結果が出なかったり、力が発揮できないこともたくさんあったんですけど、それもプラスに変えられるような気持ちで戦ってきました。本当に大きく変わりました」
弱さもいやなところも含めて自分と向き合い、克服しようと心がけ、かわることを志してきた日々もまた、挑戦である。
アイスホッケー女子日本代表に藤本那菜というゴールキーパーがいる。ソチ、平昌に続く3大会連続出場となる藤本は、2015年、世界選手権でベストゴールキーパー賞を受賞し、その後は北米の女子アイスホッケープロリーグ「NWHL」に日本選手として初めて参加し、オールスターゲームにも選ばれる活躍を見せ、世界有数のゴールキーパーとなった。
「海外の選手と比べると、自分は背が低いし、パワーもないんですけど」
身長は164cm。海外の大柄な選手に伍して活躍するとは思えないほど小柄だ。だから「プロリーグの試合では相手に当たられて倒れ、脳震盪を起こしたことも2度あります」
それでも自分の武器を磨き、伍して戦ってきた。
「でもポジショニング、フットワーク、スケーティング、スピードを武器に、相手選手よりもいち早く正確なポジションに入れば通用すると実感しました」
挑戦を続けた原動力は、「責任は重いポジションですが、自分が守ればチームが勝てるし、いいプレーをして守り勝ったときの喜びは大きい」というゴールキーパーとしての誇りと、日本代表への思いだ。ソチで日本は通用せず、メダルを目指した平昌でもその目標はかなわなかった。その夢をかなえるために、北京のリンクでゴールを死守する。
出場する選手たちは、それぞれの過程の中、絶えず挑戦を続けてきた。その過程にこそ意味がある。
挑戦してきた末に大舞台でたどり着いた選手たちの、4年、あるいは競技人生そのものの時間と思いをぶつけ、挑戦する姿を、楽しみに見届けたい