「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏(右)と早貴被告(撮影:吉田 隆)

事件から6年、逮捕から3年

 4月12日、知人のジャーナリストから連絡があった。

「とうとうドン・ファン事件の裁判が5月10日から始まるようですよ。ここまで長かったですね」

 そうなのか……。2018年5月24日に「紀州のドン・ファン」と称されていた和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助氏(享年77)が自宅寝室で怪遺体となって発見された。それから約3年後の21年4月28日、元妻の早貴被告が東京・品川区内の自宅マンションで逮捕され、起訴された。

 さらにそれから3年もの月日が経ってようやく初公判を迎えることになるのか――と頭の中で時系列を振り返っていると、ジャーナリストが続けた。

「今回の初公判は早貴被告が騙した男へのもので、例の殺人事件ではないんです」

「なんだ、それ? おいおい、大事なことを最初に言いなよ」

 つまり早貴被告にとって本丸の殺人事件の公判ではなく、別件の公判だというのだ。

 4月12日、和歌山地裁は21年に追起訴された詐欺罪の初公判を5月10日に開くと発表したが、殺人罪の公判時期については「現時点で答えられることはない」とした。

 詐欺事件の方の起訴状によると、早貴被告は、15年3月に札幌市内で男性M氏=当時(61)=に「第三者に弁償金を払わなければならない」と噓を伝え、男性から300万円を詐取するなど計約2980万円をだまし取ったとされている。

 もう少しこの辺りの事情を加えて時系列を振り返ってみよう。