進学校の生徒が抱えている闇

篠原:支援の手が届きにくい非大卒の若者に対する実践的なプログラムということで、ヤンキー・インターンはメディアや企業から高い注目を集めました。ただ、ヤンキー・インターンが注目を集め、参加者が増え始めると、久世さんや勝山さんは新たな問題意識を持つようになりました。

 ヤンキー・インターンに自ら志願してくる人たちは、ヤンキー・インターンを見つけて、ネットを使って申請手続きをするリテラシーがある人たちです。あるいは、周囲にそういう機会を見つけて勧めてくれる家族や知人のような、人との関係性を持っている人たちです。

 でも、本当にヤンキー・インターンを必要としている人たちは、そういう機会があるということを調べることができない人や、自分にそういうものが必要だという認識をそもそも持っていない人たちです。

 そこで、ハッシャダイは自分たちで教育の現場に直接、話をしに行くという活動を始めました。こうしたアウトリーチ的な活動を始めたのが2018年の半ばです。

 それから勝山さんと三浦さんで学校現場を回るようになり、こちらをメインに活動したいと考えるようになり、2020年3月に講演活動を分離する形で独立した。それがハッシャダイソーシャルの成り立ちです。

18歳の成人式に参加した新成人の18歳18歳の成人式に参加した新成人の18歳

──最近は進学校からも講演などのオファーがくるようですね。

篠原:そうです。メディアで活動が報じられたこともあり、次第に教員たちの間で勝山さんたちの活動が認知されるようになってきました。その結果、いろんな学校から「うちにも来てほしい」とオファーが来るようになりました。

 ただ、冒頭で述べたように、当初は教育困難校と言われる学校や定時制、通信制などの高校が中心でしたが、やがて進学校からもオファーが来るようになった。

 最初は「進学校の生徒は選択肢がいろいろとあるじゃん」と思っていたようですが、進学校の生徒は生徒で様々な悩みを抱えています。

 例えば、そういう生徒たちの多くは「良い大学に行き、良いところに就職しなさい」と親や先生から言われていますが、そのようなコースに乗っている子たちでも、「本当にこのまま進むべきなのか」という不安を感じています。

 あるいは、本当はやりたいことがあるのに、どこか気持ちを封じ込めて受験勉強に徹している。

「これでいいのだろうか」と思っているという意味では、教育困難校も進学校も変わらない。だから、少年院から進学校まで、どこで話しても彼らの話は若者たちに響く。