離婚後に父母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」には、専門家などから数多くの反対の声が上がっている(写真:beauty_box/イメージマート)離婚後に父母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」には、専門家などから数多くの反対の声が上がっている(写真:beauty_box/イメージマート)

「共同親権」の導入を柱とした民法などの改正案が、衆議院法務委員会で賛成多数で可決され、参議院法務委員会で審議が始まった。共同親権が導入されたとしても、DV(ドメスティック・バイオレンス)や、子どもへの虐待が認められる場合は、単独親権の扱いとなり、共同親権は認められない。だが、「裁判所がDVの有無を見極めることができるのか」など、様々な課題や不安要素も語られている。

 はたして共同親権にはどのような可能性があるのか。別居中の夫婦や離婚後の父母の子育てを支援してきた共同養育コンサルタントで、共同親権の賛成派として知られる一般社団法人りむすび代表のしばはし聡子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──まず、「一般社団法人りむすび」の活動についてお聞かせください。

しばはし聡子氏(以下、しばはし):私たちは、離婚に関して悩んでいる方や、離婚後の子育てに関して悩んでいる方を支援している団体です。

 具体的には「離婚について悩んでいるけれど、配偶者と話ができない」「離婚調停中で相手とやり取りができない」「子どもに会うことができない」「子どもをもう一方の親に会わせたくない」などの悩みを抱える方の相談に乗っています。

 この他にも、「夫婦のペアカウンセリング」「ADR(裁判外紛争解決手続)のサポート」「共同養育を知りたい方向けの講座」など、様々な支援を提供しています。

 最近は、離婚を考えている中で「共同養育」という概念を知り、共同養育や育児分担を望む方からの相談が増えています。

──なぜこの活動を始められたのでしょうか?

しばはし:私自身がかつて離婚を経験しました。私は弁護士をつけ、半ば弁護士に言われるがままに離婚調停をしました。

 私はその時、元夫に対して「自分の気持ちを理解してほしい」「謝ってほしい」という気持ちを強く持っていましたが、裁判所から「ここは感情のやり取りをする場ではありません」と言われ、「お金をどうするか」など離婚調停では条件のすり合わせの議論ばかりが展開されました。

 半年ほどで離婚は成立しましたが、「本当は離婚がしたかったわけではないのかもしれない」という気持ちもありました。「離婚調停を通して、元夫との関係がより悪化してしまった」という実感もありました。

 しかも、関係が悪化したにもかかわらず、離婚調停が終わると弁護士は離れてしまうので、そこから先は元夫と直接やり取りしなければならなくなりました。非常に困難な体験でした。

 やり取りをしたくないから、私が相手を無視していた時期もありました。離婚した時、息子は小学校4年生でしたが、家でお父さんの話を子どもにさせない雰囲気を作り、結果的に子どもに悲しい思いをさせてしまいました。

 その時に「離婚後も元夫とは関わるのだよ」と別居中の段階で誰かがアドバイスをしてくれていたら、もう少し違う対応を取って建設的に話し合うことができたかもしれない。そう考えました。こういう時に間に入ってくれる人がいたらな、と。

 離婚から1年くらいして、私と元夫の関係が少し改善してくると、息子が元気を取り戻してきました。その時に、離婚したとしても子どもがいる以上は、親同士も関係が続くことを先に知っておくことが重要だと痛感しました。そういったことを発信し始めたことが、今の活動につながっています。