衆院補選では自民党が全敗した(写真:共同通信社)衆院補選では自民党が全敗した(写真:共同通信社)

(山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

 ということで、各陣営が力を入れて頑張った三補選、無事に終わりました。勝った陣営、負けた陣営、どちらもお疲れさまでした。

 長崎3区は立憲VS維新という一見、消化試合ながら、全国的な支持の広がりを追い風に野党第一党を目指す日本維新の会にとっては極めて厳しい結果となりました。と申しますか、あまりにも駄目すぎないでしょうか、日本維新の会……。

 特に、長崎3区ではどこの調査母体の出口調査でも共通している通り、無党派層の約7割が立憲民主党公認の前職・山田勝彦さんに投票。維新は新人・井上翔一朗さんに支持を寄せられず、得票の面でもダブルスコア気味の着地になってしまいました。

 地元での浸透に一日の長のある山田勝彦さんが相手だったにせよ、維新が野党第一党になるぞと大きな旗を掲げて臨んだ選挙戦でここまで負けてしまうと、各地域で立候補を予定している公認候補についても計画の見直しを進めていく必要があるでしょう。さもないと、全国で立てた小選挙区で討ち死にラッシュになりますよ。いや、マジで。

 文字通り、追い風が亡くなったという現状認識をもとに、戦略の変更が必要なタイミングに維新は至っていると確信するところです。

 今回の三補選、与野党対決が島根1区だけだったため、長崎3区という保守王国気味のまあまあ田舎選挙区と、東京15区とかいう魔境のようなタワマン乱立地帯を含む大都会、おもしろ江東区とがほどよく混ざっていたので興味を持っておったんですよね。

 ところが、長崎3区に関しては運動量、浸透ともに凌ぐ立憲・山田勝彦さんが一方的に維新・井上さんを引き離していく展開でした。いいところなく維新候補が負けてしまったのは何とも残念です。

 地方にそこまで強い組織を持っているわけではない維新からすれば、分厚い自民党支持者や追い風の核となる無党派層を立憲候補よりも多く巻き込まないと駄目だ、というのは間違いありません。

 ここが取れない候補者では駄目ですし、じゃあ井上さんが本当に候補者として格下だったかというとそんなこともありません。これは維新に対する追い風が、少なくとも地方選挙では止んでしまっている状況だということが見て取れます。自公のいない立憲・維新の対決で、維新はもっと自民支持票や浮動票を取れないと、立憲より支持基盤の乏しい維新候補に勝ち目はありません。

 翻って、「動物園」とか「ゴミ箱」などと揶揄された今回の東京15区、江東区民としてはベストな判断をしたのではないでしょうか。