2022年4月以降に、イギリスはルワンダに2億2000万ポンド(約420億円)を支払った。そして、2027年までに、さらに1億5000万ポンドを支払う予定であるが、移送人数に比例して支払額も増える仕組みである。

 イギリス内務省の昨年6月の試算によると、移民を第三国に移送するのは、イギリスに滞在させるよりも、1人あたり6万3000ポンド余計にコストがかかる。野党の労働党は、この点も問題にしている。

保守党の選挙対策

 ルワンダでは、1994年に民族間で大虐殺事件が起きたが、その後、2000年に政権に就いたポール・カガメ大統領は近代化を進め、年率8〜10%という経済成長を遂げ、今では「アフリカの奇跡」、「アフリカのシンガポール」と称されている。また、2009年にはイギリス連邦に加盟し、イギリスとの関係を緊密にしている。

 経済発展とともに、周辺国からの難民を積極的に受け入れている。

 今回のイギリスの決定については、人権無視を批判する声が内外で高まっているが、イギリスの裁判所は、ルワンダの安全性を問う訴訟は起こせなくなった。

 国外では、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官(UNHCR)やフォルカー・チュルク国連人権高等弁務官は、「憂慮すべき先例を世界に示す」として、移送計画を懸念し、再考すべきだとの見解を述べている。また、欧州人権裁判所も仮処分の決定をする可能性があるが、法案には、それを無視することを可能にする規定がある。

 同じく移民の急増に悩むイタリアやデンマークも、イギリスのような政策を採用することを検討している。