(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年1月25日付)

スロバキアのロベルト・フィツォ首相(1月24日ドイツで、写真:ロイター/アフロ)

 中欧で政治的ポピュリズムを抑え込もうとする戦いは時折、「もぐら叩き」のゲームのように見える。ある国でポピュリズムに蓋をするや否や、別の国で飛び出してくる。

 最新の例がスロバキアだ。

 ポーランドの新政府が前の政府の保守ナショナリストのレガシー(遺産)を拭い去ろうとする傍らで、スロバキアのロベルト・フィツォ首相は非自由主義的な政策を次々導入している。

司法制度の支配狙うスロバキア新首相

 ここ数日、フィツォ氏はウクライナに批判の矛先を向け、同国政府のことを米国の操り人形と揶揄した。

 フィツォ政権の文化相は、クレムリンによるウクライナ侵攻後に停止されていたロシアとベラルーシとの交流関係の修復を発表した。

 そして何より、フィツォ氏はハンガリーのオルバン・ビクトル首相とポーランドの事実上の指導者だったヤロスワフ・カチンスキ氏の先例に倣い、スロバキアの司法制度を支配下に置く計画を推し進めている。

 同氏は汚職と組織犯罪を専門とする特別検察当局を解体し、内部告発者に対する保護を減らすつもりだ。

 明らかな目的は、2012~18年の与党時代が終わった後にフィツォ氏率いる政党「スメル」に対して開始された捜査から党幹部を守ることだ。

 欧州議会は1月半ば、賛成496票、反対70票、棄権64票で可決された決議で、フィツォ政権による法制度改革の提案を非難した。