中国で集められた海賊版DVD(写真:ロイター=共同)

 模倣品被害の拡大が止まらない。その最たる理由はEコマースの拡大であり、今後も被害は悪化の一途をたどるように思われる。一方で、日本企業は模倣品被害に真剣に取り組んでいないように見える。製品の商品力で勝負してきた日本企業は、ブランド力を伝統的に重要視してこなかったため、模倣品に対する危機意識が乏しいことがその最たる原因だ。

 日本企業の危機意識を高めて、模倣品対策に力を注ぐように行動変革を起こすためのエコシステムの形成が求められる。

(佐藤維亮:株式会社オウルズコンサルティンググループ プリンシパル)

模倣品汚染を広げているEコマースの急拡大

 模倣品(商標権・意匠権を侵害する物品を指す)の被害が悪化の一途をたどっている。OECD(経済協力開発機構)によると、全世界における世界における模倣品被害は2013年時点の4610億ドルから2019年には5090億ドルに拡大したとのことだ。これは全世界の貿易額の2.5%に当たるという驚くべき結果となっている。

 模倣品被害拡大の原因は大きく二つ存在する。

 まず、Eコマースの進展がその最大の原因となっている。かつての一般的な貿易取引においては、単一商品が大きなロットで輸送されることが多く、税関においての取り締まりも比較的容易であった。

 ところが、Eコマースが進展したことで、コンテナに多種多様な商品が混在して運搬されることが通常となり、税関にて全ての荷物を検査することは不可能になった。模倣品の混入を食い止めることが困難なのだ。

中国の税関で押収されたグッチやルイ・ヴィトンの模倣品(写真:新華社/共同通信イメージズ)

 OECDが模倣品被害額の試算を発表した2019年当時より、当然現在の方がEコマースは進展しており、被害もより一層拡大していると見て良いだろう。アマゾンは2022年1年間で約600万点の模倣品を差し押さえていることからも、ネット取引における模倣品の汚染具合は一目瞭然である。

 中国における模倣品製造技術の定着化も大きな要因だ。