戦場カメラマンとして残した記録——「巨大な日記」とは? 。

渡部陽一が撮ってきた「戦場の写真」をベースに、争いの背景、現実とその地域の魅力について解説するコンテンツ、渡部陽一【1000枚の「戦場」】よりご紹介する3回連続連載の第3回。

文=シンクロナス編集部

 こんにちは。戦場カメラマンの渡部陽一です。

 今日は、戦場カメラマンとして駆け出しの頃からずっと長い間大切にしてきた日記をご紹介いたします。

これで検問も突破!? 重さ7kgの取材日記を公開!

 かなり大きいですが、これ実は日記なんです。大体7kgぐらいあるんですが、この日記を持っていつも戦場を駆け回っていました。

 この日記、最初は薄いノートだったのですが、書けば書くほど厚くなってきて。もうロープであったり、こうしたバンドで止めてないとはじけちゃうほどなんです。

 そして、これは僕の写真です。まだ20代ですね。

 こうして日記に様々な証拠や取材データを残すことによって、自分自身の気持ちや一日一日の動きが体の中に入ってくるんですね。日記を書くということが、僕にとって、取材の基本になるんです。

 今はインターネットがあって様々な情報交流ができるんですけど、今でも時によってはこのように一箇所だけを抜いて、このわずかな部分を実際、現場に持っていくことがあるんです。

 この日記、やはり大きくて目立ちます。もう、ロープで結ばないと運べないので、こうして運んでると検問に引っかかるんです。検問に引っかかった時に、逆にこの日記の中を見てもらうことで、すごく仲良くなって、検問がパスできたりするんですね。

 僕が撮った写真や、様々な思い出、記録。データであったり、住所であったり。コラージュのようになってるんですけど、一つ一つにびっしりといろんなことを書いてます。

 食べたもの、宿泊場所、価格、国境の越え方、プレスカードの取り方。取材工程の組み立て方、安い航空チケットの取り方、すべてがこの日記の中に詰まっているんです。

 僕にとっては、現代のようにインターネットの時代であっても、アナログである手書きの日記というものは、生きてきた証しであり、取材のまさに土台、根幹なんですね。

 世界の国々をこの日記とともに担いで動いていたので、現地の国の香りであったり、独特な色合いであったり、現地で手に入れた絵の具、現地で手に入れた木の皮を紙に貼り付けて描いてみたり。僕にとって、まさに生き様そのものが、この日記なんです。