(写真:アフロ)

「南高梅」誕生の地

 毎年5月の中旬ごろから、日本一の梅の産地の街角はまるでゴーストタウンのように人影がめっきり少なくなる。梅の収穫が始まるからである。それほど梅の収穫には人手が必要なのだ。

 最高級品種とされている南高梅(なんこううめ)は、大粒で果肉の柔らかいが、その主要な産地が和歌山県の紀南に位置するみなべ町やその南の田辺市周辺だ。国産梅の6割が和歌山県産であり、その中心なのがみなべ町と田辺市なのである。

 この周辺の土地は稲作よりも梅の栽培に適した土壌で、江戸時代から梅の品種改良が盛んに行われていた。

 毎年2月には「梅まつり」がみなべ町や田辺市の梅林で開催される。全山が白梅や紅梅に覆われている見事な梅の花見をするために近隣から大勢の観光客が押し寄せ、梅見のための交通渋滞が起きるほどである。

 まさにみなべ町や田辺市は日本一の「梅の里」なのである。

 ちなみに、読者諸兄は「南高梅」の名前の由来をご存じだろうか?

 それを語るには、まず南高梅が誕生するまでの歴史を振り返るべきだろう。