ウエルシアホールディングスはドラッグストア業界で初めて売上高が1兆円を突破した。写真:アフロ

 ドラッグストア業界のトップランナー、ウエルシアホールディングス(東京都千代田区、松本忠久社長)が2022年度に業界初の売上高1兆円突破を達成した。この背景には、一般的なドラッグストアにとどまらない商品やサービスを提供する業態変革の取り組みがある。今回は「ウエルシアモデル」と呼ばれる新しいドラッグストアを目指す同社の戦略を紹介する。

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「地域No.1の健康ステーション」を掲げ、地域の健康支援

 ウエルシアホールディングス(HD)は、「地域No.1の健康ステーション」を標榜する。これは調剤併設店舗を柱に「地域の健康支援」につながる事業を拡大し、「ウエルシアモデル」をつくろうというものだ。

 2023年2月期時点でウエルシアHDの調剤併設店舗数(国内)は2019店舗で、全店の74.7%にあたる。

 コロナ禍による医療機関の受診控えは専業の調剤薬局を苦境に追いやり、ドラッグストアの調剤部門も扱い処方せんの減少で苦しめたが、マスクや衛生用品など日用品の伸びが売上げを押し上げる中、同社は調剤併設店舗の充実に力を入れ続けた。

 同業他社の調剤併設店舗の状況をみると、マツキヨココカラ&カンパニーが924店舖(併設率27.1%、2023年3月末)。調剤に注力してきたツルハHDも850店舗(同32.8%)にとどまっており、ウエルシアHDが併設店舗数、併設率とも群を抜いている。

 ウエルシアHDの薬剤師数は7708人で、1店舗当たり2.85人(この薬剤師の多さが調剤だけでなく、ドラッグストアで提供するさまざまなサポートサービスを可能とする)。調剤に力を入れてきたことで、コロナ後に日用品売上の反動減はあったが、処方せんの扱いが再び伸びてくることで売上が増加。同社が月別の既存店売上で前年割れとなったのは過去5年間で3回(2019年10月、2021年2月、4月)のみとなっている。

 また、地域の健康支援という点では「ウエルカフェ」の設置が挙げられる。2023年9月時点で445の店舗内の地域協働コミュニティーの場としてフリースペースを設けており、薬剤師による健康アドバイスや地域の社会福祉協議会による介護支援相談などのイベントを実施している(2023年の夏は「夏の涼み処」を展開。地域の生活者の避難、または憩いの場として開放し、常時空調で涼しい環境を整えた。熱中症対策のポスターを掲示し、注意喚起を図った)。

 そして、移動販売の導入である。2022年5月から静岡県島田市で、2023年11月から埼玉県長瀞市で移動販売車の運行を始めた。「うえたん号」のネーミングで食品・生活日用品に加え、化粧品と第一類医激品を含む一般用医楽品を対象に、事前にお客がウエルシア店舗に注文した商品を移動販売車で運ぶ。車両に搭載した大型モニターでは、店舗にいる薬剤師や管理栄養士とのオンライン健康相談も行える。これは地域に積極的にかかわることでコミュニティーづくりのきっかけにする取り組みで、現状、4台の移動販売車が運行している。

 さらに注目しておくべきはたばこ販売の停止だ。ウエルシアHDでは地域No.1健康ステーションを実現する一環で、2026年2月までにグループ企業の全店でたばこ製品の取り扱いを終了することを発表。健康産業の中心企業となることを明確にアピールしている。既に2023年9月までにグループのドラッグストア262店でたばこの販売を停止しており、今年度末となる2024年2月までに422店舗で販売を停止する予定だ。