一方で、金融サービスストラテジストのデビッド・リター氏は、「多くの人がApple Pay、Google Payなどの電子決済サービスや、アマゾンの会員サービスであるPrimeの決済手段にビザカードを登録しており、アマゾンとしてはビザの排除が困難」と指摘している。

 「むしろ今回のアマゾンの反発は交渉戦術である可能性が高い」(同氏)。小売大手各社とクレジットカード会社の取引条件は統一されておらず、決済手数料は個別に設定されているという。「アマゾンは、より長期の契約を結んで料率を下げたいと考えた、あるいは現行料率の据え置きを要求している可能性がある」と同氏はみている。

大手スーパーも過去に反発

 ビザに反発した企業はアマゾンが初めてではない。これまでにも米スーパーマーケットチェーン大手のクローガーが決済手数料を巡って対立し、ビザカードの取り扱いを一時停止したことがあった。16年には米小売り大手ウォルマートがカナダでビザと手数料協議の合意に至らず、20店舗でカード受け入れを停止し、半年後に和解した。

 こうした中、クレジットカード大手は新興金融サービスとの競争に直面している。米決済サービスのワールドペイによると、北米電子商取引(EC)市場におけるクレジットカード利用率は32%で、非現金取引で最大。だが最近は、米ペイパル・ホールディングス傘下の送金サービス「ベンモ」や、「バイ・ナウ・ペイ・レーター(BNPL)」と呼ばれる後払い決済サービスの利用が増えている。

 クレジットカードの利用率は20年に7%減少した。これに対しBNPLは78%増加。コロナ禍でクレジットカード利用の減少が加速した一方でBNPLは若年層を中心に急速に伸びた。

 アマゾンは21年8月、大手BNPLの1社である米アファーム・ホールディングスと提携した。これにより米国のアマゾンの顧客はクレジットカードを使わずに分割払いが利用できるようになった。

 英フィンテック新興企業トゥルーレイヤーの幹部であるロジャー・デス氏は、「アマゾンは自社ブランドの力を見せつけた」と指摘する。「両者によって協議されている解決策や、今後見いだす最終結論にかかわらず、アマゾンの行動は決済手数料に関する議論にスポットライトを当てるものになった」と同氏は述べている。

 (参考・関連記事)「アマゾンとVISAの対立、クレジット業界への影響大か | JDIR