会社の「場所」とは?

 株主総会の例が示すように、これまで会社は、物理的な「場所」に「所在」しており、それは誰の目にもすぐにわかることが前提とされてきました。

 例えば、会社法第4条で、「会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする」とされているほか、第49条では、「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」とされています。また、第27条により、株式会社の定款には「本店の所在地」を書かなければならず、第31条により、株式会社は定款をその「本店及び支店」に備え置かなければなりません。

 しかし、血や肉といった具体的な実体を伴う「自然人」に対し、「法人」はもともと抽象的なものです。現在の制度は、本来は概念的な存在である会社を、「本店」などの仕組みを通じて人為的に特定の場所に紐付け、「準拠法」や「裁判管轄」を明確にしたり、課税を行えるようにしてきたともいえます。

 そして、デジタル技術革新は、「場所」の定義を難しくするものでもあります。

 デジタル技術がもたらした変化として、「地球の裏側にいる相手とでも瞬時にメッセ―ジがやり取りできる」「インターネット経由で世界中の会社のサービスにアクセスできる」など、地理的制約を簡単に超えられることが挙げられます。今や、特定のオフィスを持たず、社員全員がそれぞれ各国にある自宅からリモートワークをする会社すら、技術的には実現可能です。そうなると、会社の「所在地」や取引の「場所」は相対的なものになっていきます。

 もちろん、この場合でも、「とにかくどこかに本店の場所を決めろ(例:誰かの家を本店として登記しろ)」と法律で要求することはできるでしょう。しかし、そうなると、「では、なるべく税金の安い所に」など、場所を「選ぶ」行為も増えるでしょう。結果、その「場所」が実態と合わなくなり、課税や規制監督などを十分に行えなくなるかもしれません。現在、世界的に話題を集めているグローバル企業への課税問題も、このような視点から捉えることができます。