「CDO Summit Tokyo 2018 Winter」(2018年12月5日開催)レポートの後編では、日本のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)をリードする企業のCDOたちによるスピーチとパネルディスカッションの模様をお届けする。近年、一気に熱が高まった日本のDXだが、まだまだ課題は山積み。果たしてリーダーたちは、2019年以降の変革をどう捉え、いかに達成しようとしているのだろうか?

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「CDO Summit Tokyo 2018 Winter」取材レポート (前編)
「No CDO, No DX」に賛同する国内外・官民のリーダーが登壇

正解など求めるな。変える勇気、捨てる勇気を持て

 CDO Club Japanが年4回ペースで開催してきたCDO Summitだが、今回は飛躍の年となった2018年の締めくくりであり、「CDO of the Year」の発表も行われる。来場者も回を追うごとに増加し場内の熱も高まる中、登壇者である先進企業のCDOたちはスピーカーの常連として定着。日本のDXの象徴的存在として認知されるようになった人ばかりだ。Sansanでデジタル戦略室長を務める柿崎充氏もその1人。「前回の復習から始めましょう」の一声でスピーチを開始した。

Sansan株式会社 デジタル戦略室 室長 / CDO Club Japan 事務局マネージャー 柿崎 充氏

 柿崎氏の持論は一貫している。「DX=生産性向上施策という解釈はやめよ」である。今回のテーマも「ディスラプターの戦略・思考法を理解する」だったが、来場者である企業の幹部たちに投げかけたメッセージは「正解なんてない。求めないでください」だった。例としてUberを取り上げ、「彼らはGoogle APIを巧みに活用し、Googleマップを使ってディスラプションを起こした。しかし反面、GoogleはUberの成功で貴重なデータを大量にゲットできている」と語り、どちらが得をして損をしたか、という正解要求に意味などない状況が今なのだと伝えた。

 その上で、CDO Club Japanの事務局マネージャーでもある柿崎氏は、CDO人材の重要性に触れた。用いた事例は、なんとノミ(蚤)を使った実験の話題。試験管に入れられ、ジャンプしてもそこから出られないでいるノミの群れに、1匹のハイジャンプ可能なノミを投入するだけで、何匹ものノミが試験管からの脱出に成功したという実験結果だ。「私も含め、CDOとはこのよく跳ぶノミです」と語り、場内の笑いを誘う。そしてDXを成功に導く上で、いかにこのよく跳ぶノミを外部から連れてくるか、内部で育成するかが問われてくるのだと示した。