緊急地震速報を支えるセンサーネットワークの裏側

処理速度と予測精度を向上させるため継続的に機能を拡張

栗原 雅/2018.10.31

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緊急地震速報の受信イメージ

 地震の発生直後に強い揺れの到達時刻や震度を予想し、スマホ、テレビ、ラジオなどで知らせる緊急地震速報。それを支える気象庁の「地震活動等総合監視システム(EPOS:Earthquake Phenomena Observation System)」は、大量のセンサーデータを高い精度で生かしている実運用中のシステムとして世界屈指の存在である。

 EPOSの正式運用開始は2007年。気象庁はその後も継続的にEPOSを進化させてきている。一方産業界では生産ラインの監視や異常の早期検知、予防保全などに、IoT(モノのインターネット)やビッグデータを応用しようとする例も少なくない。センサーデータを基幹業務で活用したい企業にとって、EPOSの仕組みと機能拡張は参考になる点があるはずだ。

 気象庁はEPOSの能力をいかに高めてきたのか。地震火山部管理課で地震津波監視システム企画調整官を務める塩津安政氏と、同じく管理課調査官の中川茂樹氏に、センサーネットワークの実用性を向上させるために重ねてきた工夫のポイントを聞いた。

6000地点に広がるセンサー網から受信

 最初に、現在稼働中のEPOSの全体像を簡単に整理しておこう。

 EPOSのセンサーネットワークは、地震の規模や震源位置の推定機能を持つ多機能型の地震計、地震の震度を計算する震度計、津波の観測機器など、気象庁が設置した装置だけで全国1000地点あまりに広がる。加えて、自治体や防災科学技術研究所などが設けた5000地点を超える観測施設からも常に地震や津波のデータを、24時間365日休まずに受信し続けている。

 このうち緊急地震速報に用いるのは、気象庁が約50km間隔で設置している多機能型地震計と、防災科学技術研究所が約20km間隔で設置している地震計だ。合わせて約1000地点で検知した揺れを基に、地震の発生時刻や震源、地震の強さ(マグニチュード)、揺れの強さ(震度)、強い揺れが広がる範囲などを割り出す。そして地震の発生後、数秒から十数秒の間に、震度5弱以上の揺れが想定される都道府県や大枠の地域を特定し、放送局や通信キャリアに緊急地震速報を発信する。