合理的なようでも、「ムダ」を愛する

 優秀な人は全てが合理的かと言えばそうではありません。徹底的に合理化する反面、浮いた時間を自分の将来のための能力アップに投資しています。

 優秀な人と普通の人の能力アップの一番の違いは何か。普通の人は目の前の仕事に役立ちそうなテクニックを学びますが、優秀な人は違います。「リベラルアーツ」を学ぶのです。

 なぜ、優秀な人は今の仕事に直結しないリベラルアーツを学ぶのか。それは、リーダーとして必要な教養だと知っているからです。

 組織は大きく3つの階層に分かれます。社長は「将来の姿を決める」、部長は「今を将来の姿につなぐ」、課長以下は「今現場で起きている課題解決する」です。仕事のテクニック系は使えるのは課長まで。それまでに部長以上で通用する教養を身に着けておかないと、そこでゲームオーバーになります。なぜなら、部長クラスになった時、社外の同クラスの方々の会話についていけなくなるからです。そうなってしまってはもう手遅れです。リベラルアーツは深く広いものなので、付け焼刃ではかえって恥をかくだけです。

 部長以上に必要な、未来を描く洞察力は、仕事のテクニック本では身につきません。なので、社長や部長クラスは、「三国志」など歴史書の中から、組織を率いること、チャンスや修羅場での対応、未来を描き、伝え、指揮することなどの本質を探っているのです。

 逆に言えば、リベラルアーツを若くからおさえておくことは有利になります。なぜなら、テクニックが優秀な若手集団の中で経営幹部と同じ教養を持っている人がいれば、頭ふたつは飛び抜けられるからです。若手のうちは深い知識がなくてもかまいません。リベラルアーツに興味を持つこと自体を経営幹部は喜んでくれ、参考になる知識や本などを紹介してくれ、可愛がってくれることでしょう。

 特に今の大学教育では、哲学、世界史、自国の歴史などに関する知見が欠けているのでチャンスです。最初は入門書でも大丈夫です。例えば『仕事に効く 教養としての「世界史」』(出口治明著、祥伝社)などスラスラ読めそうな本から入ることをお勧めします。興味深い箇所は巻末に参考文献として原書名が載っているので、そこを深掘りすると頭にどんどん入ってくることでしょう。

(後編につづく)