このためLTE-M(eMTC)は、移動中の高齢者や児童の見守り、自転車の盗難防止など、センサーが広範囲を低速で移動するようなIoTサービスの利用が想定される。これに対してNB-IoTは、スマートメーター、農場、プラント、駐車場(スマートパーキング)、マンホール、エレベーター/エスカレーター、自動販売機、ゴミ収集場のように、センサーにモビリティが求められない用途が見込まれる。

独自仕様LPWA対抗のための省電力化と低価格化の工夫

 LTE版LPWAの性能と機能は独自仕様のLPWAに勝る。半面、独自仕様のLPWAよりも消費電力が大きく、価格が高くなる傾向がある。見方を変えると、省電力化と低価格化は、LTE版LPWAが独自仕様のLPWAに対抗するための重要な要件になる。

 省電力化に関してLTE-M(eMTC)とNB-IoTはともに、「eDRX(extended Discontinuous Reception)」および「PSM(Power Saving Mode)」の2方式を採用して対処する。通常LTE版LPWAのセンサーは、消費電力を減らすために、ネットワーク側から送信された各種信号を確認する受信状態と、受信しないスリープ状態を繰り返している。eDRXは、ネットワーク側から信号を送信する間隔を長くすることで、センサーのスリープ状態を延ばして消費電力を抑える。PSMは、スリープ状態から信号を確認する受信状態になるまでの間隔をセンサー側で空けて省電力化を実現する。

 他方、低価格化を実現できるかどうかは、LTE版LPWAのサービスを提供するにあたり、4GのMBB向け基幹網や基地局のソフトウエアをどの程度小規模な変更にとどめられるかによるところが大きい。変更が少なければ、価格を抑えやすくなる。その点、LTE-M(eMTC)よりMBBの仕様との開きが大きなNB-IoTは、多くのソフトウエアの変更が求められる。

 この点を踏まえると、すでに4Gが普及している米国や日本では、安価に提供できる可能性があるLTE-M(eMTC)のサービスが先行して広がる公算が大きい。実際、2018年1月にKDDIが先陣を切ってLTE-M(eMTC)のサービス「KDDI IoTコネクト LPWA (LTE-M)」を開始。月間の通信量が10KBまでのプランの場合、1回線当たり月額40円から利用できる。なお、NTTドコモとソフトバンクも2018年度中にLTE版LPWAのサービス開始を計画している。

 世界に目を転じると、中国や北欧でも2018年初めからLTE版LPWAの一部の仕様を採用したサービスが始まった。このうち4Gの普及率が低かった中国は、NB-IoTを他国に先駆けて普及させるという方針の下、環境の整備を強力に推し進めている。