無線センサーネットワーク技術LPWA(Low Power Wide Area)の用途は、川の氾濫やダム決壊の予知・監視から、児童や高齢者の見守りにいたるまで広範にわたる。このようなIoT用途のための無線データ通信として、従来は特定小電力無線、無線LAN(Wi-Fi)、Bluetooth、3G/4G携帯電話網などが利用されてきた。ただ、いずれも枯れた技術である一方で「帯に短し、たすきに長し」といった仕様面の課題を抱えており、あらゆる用途に一つの技術で対応するのは難しかった。

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新しい無線技術LPWAがなぜ注目されるのか?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51831

 特定小電力無線、無線LAN、Bluetoothは通信距離が短く、広い範囲に分散した機器の通信に用いるのにはあまり向いていない。逆に、3G/4G携帯電話網はある程度長い距離の通信が可能だが、大容量データの送受信が常時求められない場合は、オーバースペックになりがちだ。機器への機能搭載や回線利用に要するコストが高いことに加え、消費電力が大きいなどの課題があるため用途は限られる。

 LPWAは、従来の技術が抱えるこうした弱点を補うかたちで登場した。海外に続き、国内でも2018年から段階的に実証実験を経て実用化が進展する見通しで、IoT向けにこれまで利用されてきた無線ネットワークを徐々に置き換えようとしている。

 LPWAは独自仕様を用いるものと、携帯電話網を利用するもの(セルラーLPWA)の2種類に大別できる。今回はそのうち独自仕様のLPWAを少し掘り下げて見ていく。仕様やシステム構成などいくらか技術的な話になるが、「低消費電力で広範囲をカバーする無線ネットワーク」という抽象的な概念だけでなく、具体的な技術の基本を把握しておきたい。そうすることが、LPWAの利点を理解したり、LPWAの応用を構想したりするのに役立つはずだ。

独自仕様LPWAのなかで先行するLoRaとSigfox

 独自仕様のLPWAとして代表的な規格がLoRa(ローラ)とSigfox(シグフォックス)で、すでに多くのサービスで使われ始めている。これらは2015年以前にサービスが始まった「先行組」の技術だ。

 先行組には「RPMA」や「FlexNet」という規格もあるが、利用はあまり進んでいない。そのため2017年時点では、LoRaとSigfoxが独自仕様LPWAの代名詞になっている。