デジタルトランスフォーメーションが注目されるようになったのは、ビジネス環境の不確実性が高まり、変化のスピードが加速しているからです。ビジネス環境の変化に即応し、ダイナミックにビジネスプロセスを変えてゆかなければ、もはや生き残れない時代になりました。

 また、新興国の経済発展は地球資源の枯渇を加速しています。徹底して無駄を排し、効率化を推し進めなくては、サステイナブルな社会を実現することはできません。デジタルトランスフォーメーションは、そんなこれからの社会の要請に応えようとしています。

 ところで、ここで使われている「トランスフォーメーション(転換や変換の意)」という言葉ですが、何から何に転換しようというのでしょうか。

 これまでのビジネスは、人間が働くことを前提に「ビジネスプロセス」が作られてきました。無駄を無くし、効率よく、品質を高められるようにと、仕組みや手順の改善を進めてきました。そのビジネスプロセスをプログラムに置き換えたものが情報システムです。これを現場の人たちに使わせることで、このビジネスプロセスを徹底させ、業務の効率化や品質を向上させてきました。

 しかし、人間が働けば、さまざまな制約条件に縛られます。労働時間や福利厚生、安全管理などは絶対的な条件です。従来は、このような制約の中で、コスト削減や時間短縮、品質向上を目指してきました。しかし、それも行き着くところまで来てしまいました。膨大なシステム投資をしても、人間が働くことの制約がある以上、数パーセント、あるいは十数パーセントの改善が関の山なのです。

 しかし、多くの仕事をロボットや人工知能に任せれば、人間が働くことの制約がなくなります。テクノロジーの進化は、それを可能にしようとしています。そうなれば、ビジネスプロセスも人間の制約を考慮せずに組み立てることができます。その結果、同じシステム投資であっても、数倍、あるいは数十倍の改善や改革が見込めるかもしれません。

「人間を前提」にすることから「機械を前提」としたビジネスプロセスへ転換し、ビジネスのあり方を根本的に変えてしまおう。

 デジタルトランスフォーメーションとは、そんな取り組みを意味する言葉です。

 この連載では、それがどういうことなのかを掘り下げてゆきます。