また(2)については、インプットである労働時間の削減とアウトプットである業務成果の増大に資する制度が検討の対象になる。つまり「フレキシビリティ(柔軟性)」と「プロダクティビティ(生産性)」双方の向上が制度・ルール構築の主眼であると整理できよう。

 次に制度・ルールの適用範囲の違いで見ると、全社を適用範囲とするものと、職場単位で適用されるものとがある。前者は一般的に人事部が企画立案することになろう。一方、後者は各職場が自発的に企画立案し導入するものである。

【2】制度・ルールの具体例

 それでは制度・ルールの具体例を挙げてみたい。まず「フレキシビリティ」向上を主眼とした制度である。前述したとおり、働く「時間」や「場所」の柔軟性を高めるものが該当する。代表例は以下のとおりである。

(1)働く時間の柔軟性向上

 フレックスタイム制、有給休暇促進施策(時間単位取得可、計画的付与)、様々な休暇制度(ファミリーサポート休暇、バースデー休暇など)など

(2)働く場所の柔軟性向上

 在宅勤務、サテライトオフィス勤務など

 なお、近年では「働く“時期”の柔軟性」を高める、例えばキャリアアップ休職制度(資格取得や海外留学等を理由とした休職)や出戻り制度(一度退職した社員の再入社を促進する制度)などを設ける会社もある。

 このように「社員が抱える制約条件への対応」という範疇を超えてフレキシビリティを高める動きは、社員を会社に縛り付けるのではなく、主体的な選択の余地を与えることで「働きやすい会社」にすることが社員の採用や引き留めに有効であるという考え方に基づいている。