美しく美徳的な姫君が、醜く悪徳的な老人の手によって、精神と肉体が崩漬させられる、倒錯的で嗜虐的な奇譚、『落窪物語』全4巻は、清少納言の『枕草子』、紫式部の『源氏物語』に先立つ10世紀末に成立する。 作者は不明だが、下級貴族の源順(みなもとのしたごう)など、男性によって描かれたものと考えられている。『枕草子』にも『成信の中将は』の段に、「交野の少将もどきたる落窪の少将などは、をかし」とあるが、『落窪物語』巻4は、清少納言が『枕草子』成立以前に書き加えたとする説がある。『源氏物語』や『枕草子』などの格調高い雅な王朝文学とは異なり、『落窪物語』には、当時、行なわれていた、「モラハラ」「パワハラ」「セ