早ければ2~3カ月で解決することも

 いきなりM&Aと聞くと、相当に専門知識のいる難しいケースのように感じるが、要はお互いの思惑が一致すれば、非常にシンプルな方法とも言えなくない。

「一見、複雑に思えるこの方法ですが、誰も間に挟まずにお互いの合意で、余計な費用もかけずに極秘で行うのであれば、会社を丸ごと売買、資本金の譲渡であれば、本来は書類一枚で済みます」

 とはいえ、いくら両社の自由とは言っても、具体的な売買価格を決める目安が必要だ。

「その場合に重要になるのが、貸借対照表の純資産の部なのです。この金額が会社の表面上の価値となります。1億円の財産、負債(借金)が7千万円ある会社があったとします。さて、この会社はいくらが妥当かを考えるとき、財産と借金の差額3千万円が簡単に浮かぶと思います。この差額こそが純資産ということです。ただし表面上と言ったのは、貸借対照表上の差額でしかありませんから、すべての会社の内容を知ってお互いの金額で合意ができれば売買契約(資本金の譲渡)は、資本金譲渡証という紙切れ一枚で成立が可能であるということです」

 前回(『自分の会社について知らない経営者が多すぎる』http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54660)に述べたように、親族や従業員などに承継させるには、準備や教育が必要であり、時間がかかるデメリットがある。

 対してM&Aであれば、買いたい会社が見つかって、価格の合意ができれば、すぐにでも承継ができるメリットがある。条件さえ揃えば、早いケースでは2、3か月ということもある。

 ただ今回の例は、あくまでうまくいった話。M&Aが簡単な方法であるかのように述べてきたが、実際は、買い手があっての話だ。

 小堺さんは言う。

「負債があったり、業績が悪化している会社を買いたいという会社は実は稀です。やっと見つかったとしても、安く買い叩かれるでしょうから、うまくいっても実際は1、2年かかる案件がほとんどのようです」