1963年、ビール事業に参入したサントリーは、当初は厳しい現実にぶち当たる。圧倒的に強い洋酒ビジネスとは、まるで違っていたのである。『日々に新たに――サントリー百年史』(サントリー株式会社編)には、「夜、バーへ売り込みにゆき、人手不足の折からカウンター内に入り、コップなどを洗う手伝いをする者、枚挙にいとまなし」 「クリスマス前、新宿にマンモスバー開店。担当者、店の前でオーバーも着ず通行人にビラ配り。開店の案内に声をからす」(ビール営業マンの声から) ウイスキーでの甘い商売に絶縁状を叩きつけて進出したビール事業だが、現実は厳しかった。市場がすんなりと受け入れてくれないのだ。酒販店への販売ルート