FPTコーポレーション 取締役会長のチュオン・ザー・ビン氏(撮影:宮崎 訓幸)

 ベトナムICTのリーディングカンパニーであり、企業ITのオフショア開発パートナーとしてグローバルで急成長するFPTコーポレーション。近年はビジネス変革を伴うDX推進にも注力する。クラウドが一巡し、生成AIにまい進する世界のIT市場。勢力図が大きく変わろうとするなか、同社はどこへ向かうのか。同社の戦略からは、世界のIT市場の現在と未来が見えてくる。

2023年に日本市場の成長率が世界一に

――好調な決算を発表しています。直近の業績についてどう評価していますか。

チュオン・ザー・ビン(Truong Gia Binh)/FPTコーポレーション 取締役会長

1956年生まれ。1982年に留学先の旧ソビエト連邦(現ロシア)で数学の博士号を取得。1988年に12人のベトナム人技術者とFPTコーポレーションを設立し、CEOに就任。2013年より現職。

チュオン・ザー・ビン氏(以下敬称略) コロナ禍の3年間、世界は困難な時期でした。またロシアとウクライナの戦争、中国と米国の対立など、今も非常に難しい局面が続いています。

 激変する環境のなか、世界の企業は「いいビジネスパートナー」を求めています。技術によって新しい体験を顧客に提供し、同時にコストも削減していく。これらの難しい課題は、自社だけで解決するのは困難で、ビジネスパートナーとの協業で戦い抜こうと考えています。当社は今、そのパートナーとしてチャンスをいただいていると認識しています。その結果、非常に高い目標を達成できています。

 2022年は約18億7,000万米ドル(約2618億円)の売上高を達成しました。これは前年度比約24%増です。特にDX関連事業は前年度比約33%成長しています。

 2023年も引き続き好調で、売上高はすでに10億米ドル(約1400億円)を超えており、前年同期比で約21%増の実績を挙げています。特に、ベトナム国内以外の売上高成長率は30%以上を保っており、今年はグローバルマーケットの売上高が10億米ドルを超える見込みです。(※1米ドル=140円として計算)

 当社のビジネスにとって日本のポジションは大きく、戦略的な市場です。日本の大手システム開発企業と直接取引しており、日本市場は2023年上半期も前年比50%以上と非常に好調に推移しています。

 日本におけるビジネスの目標ですが、2025年度に国内のトップ20のITサービスプロバイダーに入ることを目指しています。そのうえで、2027年には日本だけで10億米ドルの売上高を達成したいと考えています。