様々な業種の顧客システムが稼働する商用クラウドサービス基盤「M’sSCaYⓇ NEO」を運用するみずほリサーチ&テクノロジーズ。同社はハードウェア機器などの保守切れに対応した基盤更改の着手にあたり、パートナーとの新しい関係性の構築や社内のエンジニアの知識や経験値向上の取り組みを通して、運用負荷の軽減とコスト削減を図ることにした。みずほリサーチ&テクノロジーズの間宮 敏則氏とヴイエムウェア株式会社(Broadcom)の今村 哲氏が更改プロジェクトの課題や取り組み、成果などについて語り合った。

機器などの価格上昇の中でサービス価格を維持した基盤更改を計画

みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社
ITインフラ事業部第3部 部長 間宮 敏則氏

間宮 みずほリサーチ&テクノロジーズで企業や公共関連、みずほ銀行の関連会社等に向けた「M’sSCaY NEO(エムズスカイ・ネオ)」という基盤を提供する部門の部長を務めています。2017年に構築した現在の基盤の主要なハードウェア/ソフトウェアが2025年から保守切れの時期を迎えます。そこで、M’sSCaY NEOの基盤を更改することとし、そのプロジェクトマネージャーを務めています。

今村 ヴイエムウェア(Broadcom)の金融ソリューション部で大手銀行を担当するプリセールスのソリューションアーキテクトです。今回の更改プロジェクトでは提案から実際の構築支援までを行っています。

間宮 「M’sSCaY NEO」は様々な業態の企業や組織が利用する商用クラウドサービスプラットフォームで、ご利用いただいているお客様から耐障害性やサイバーセキュリティの強化、柔軟性などに関する様々なご意見をいただいていました。そこで更改に向けて、次世代プラットフォームとしてのあるべき姿についての議論を始めました。その中で、一番問題になったのがサービス価格の上昇を抑えることでした。大幅な円安や世界的な人件費高騰の影響で、ハードウェアやソフトウェアの価格が相当上がっています。かかる環境変化等も踏まえ、コストを抑えながら、従来と同レベルの価格でサービスを提供する基盤をどうしたら実現できるのかが最大の課題でした。

ヴイエムウェア株式会社(Broadcom)
ソリューションアーキテクト本部
金融ソリューション部 部長 今村 哲氏

今村 ヴイエムウェアは、お客様のビジネス課題を正しく理解した上で、そこからIT課題につなげる形で提案するようにしています。重要なのはそこでの目線合わせです。今回のプロジェクトでもマネジメント層と実際にプロジェクトを担う人たちとの目線がずれてしまうと、計画通り進まない可能性がありました。そこで要件定義の前段階で技術的な要素を含む構想検討ワークショップを開催させていただいた後、ヴイエムウェアのコンサルタントチームが要件定義を支援させていただきました。弊社の貴社の課題の捉え方、支援はいかがでしたでしょうか。

間宮 最初、少しギャップがあったように思います。「M’sSCaY NEO」は複数の業種・業態のお客様にご利用いただいているので、個別カスタマイズ対応として一定の手動運用がある点に特色があります。また、セキュリティ要求の高度化やEOL対応等によるソフトウェアアップグレードのコスト割合が上昇しており、運用コストの削減をまず目標にかかげました。その中で、次の基盤をどう考えるのかを検討するようになりました。

ソフトウェアの一貫性を重視し「VMware Cloud Foundation」を選定

今村 当初、集約度を高め構成をシンプルにし、併せて運用もシンプルにしていけばコスト削減ができるのではないかというところから検討を開始させていただきました。ただそれではゴールが不明確になってしまう可能性があり、更改のための目標を考え直す方がよいというお話しをしております。

間宮 プロジェクトメンバーは新しいソリューションを導入したいという強い思いを持っています。ただ新しいソリューションを導入しようとすると、さらにコストが上がってしまう危険性があります。そこでコストを見ながら、新しい機能を入れて安定稼働を前提に目指そうと決めたのです。

 そこで、検討したのが、一番負荷がかかっているインフラのメンテナンス、ソフトウェアのアップグレードの負荷をどう抑えるかということでした。セキュリティの観点からアップグレードは定期的に行いますが、各プロダクトとの互換性確認などのために多くのリソースを割いていました。コストもかさんでいたことから、効率化、生産性の向上の検討を続けました。そこでは機能を落とさずにシンプルにすることがカギで、「VMware Cloud Foundation(VCF)」をはじめ、複数の製品を比較しました。

今村 VCFはVMware by BroadcomのSoftware-Defined Datacenter(SDDC)のフルスタックソリューションで、ヴイエムウェアとの関係がより一層強まると捉えられがちです。そのあたりはどう考えられたのでしょうか。

間宮 ヴイエムウェアのワークショップを通して、総合的に検討し他の製品と比較し、最終的にVCFに決めました。戦略的なパートナーとしてヴイエムウェアとより強固な関係を築いて、一緒にプロジェクトを進めることを覚悟したのです。他の候補はVMware製品を搭載したHCIなどでしたが、それだと結局ハードウェア選択の自由度が下がってしまいます。VCFであれば、ハードウェアは私たちが選ぶことができるので、サイジングも自由ですし、スケールアウトも柔軟にできます。そこでソフトウェアが一貫性を持つ形であればアップグレードも容易だと考えて、VCFを導入することにしたのです。その部分は導入を検討する企業が一番悩むところと聞いていますが、VMware製品をフルファンクションで使い出すと、自然にロックインに近い形になってきます。その点は割り切った上で、コスト削減を実現しようと考えたのです。

スムーズなアップグレードから、本番環境の運用負荷低減に手応え

今村 機能的な面ではどうだったのでしょうか。「SDDC Manager」では管理コンソールからSDDCのソフトウェアを一括にアップグレードできる仕組みなどが評価されております(図1)。この辺りの機能はいかがでしたでしょうか。

間宮  パッチの適用やアップグレードが一番問題になったところでした。VCFの検討を始めた頃、脆弱性対応などの緊急パッチの適用が難しい状態で、VMwareから個別パッチの適用ができるツールがリリースされるという話しでしたので、そのリリースを待ち望んでいました。リリースされた「Async Patch Tool」を使いましたが、緊急パッチにも対応可能で、開発、運用両面で柔軟性を確保できるようになり、とても助かりました。

図1.「SDDC Manager」による仮想化プラットフォームのライフサイクル管理負荷を軽減


今村 プロジェクトのスケジュールとご苦労された点をお聞かせ下さい。

間宮 設計からリリースまでを1年のスパンで計画し、実行しました。設計工程での最大の課題は、複数の環境を疎結合で運用する基盤に対して、VCFのドメインをどのように構成するかという点でした。最終的には、疎結合を阻害しないように、複数の統合管理画面を作ることにしました。プロダクトは増えますが、同じことを複数箇所でやればよいので、構築は大変でも運用はスムーズになると考えました。

 また当初の計画では構築プロジェクト中のアップグレードは予定していませんでした。ところが期間中にVCFの新しいバージョンがリリースされることが分かり、アップグレードを決めました。そして、23年秋から4カ月かけて、検証環境のアップグレードに取り組みました。すでに単体テスト(UT)、結合テスト(IT)まで完了していた中でアップグレードしたのですが、24年初めまでには回帰テストを終了させることができました。想定していた以上にスムーズだったので、本番環境総合テスト前に本番環境のアップグレードを決め、最終的なテストを行っているところです。新しい基盤ではプラットフォームのアップグレードも自社で完結できるようにするために、VCFの導入を決めましたが、早くもその狙い通りの結果が出ていて、大きな手応えを感じています。

仮想化基盤アップグレードコストの6割削減を実現

今村 プロジェクトの現在の段階における成果、VCFの導入効果についてはいかがでしょうか。

間宮 検証環境をアップグレードしてみて、アップグレードの開始から終了までの時間は想定よりも短かったです。これであれば本番運用のメンテナンスの中でもスムーズにアップグレードできるので、期待通りの効果を得られそうです。

 今回のプロジェクトではコスト削減を含む全体コストの最適化が大きな命題だったのですが、現段階の感触では今までのプロジェクトと比べて仮想化基盤アップグレードコストを6割ほど減らせると見ています。計画段階も含めると、プロジェクト期間はそれほど短縮化できませんでしたが、コストは大きく減らすことができると感じています。これは大変大きな成果でした。ただ、この成果を運用に継続的に取り込むには、設計工程および運用工程を通じて、ヴイエムウェアにしっかり協力してもらって行うことが大切です。その上で、自社の環境に合った手順を組み立てて、実施する事でコストを大きく減らすことが可能になります。

図2. VCFで実現する「M’sSCaY NEO」概要


今村 今回のコスト削減や最適化というのはとても大きな成果だと思います。本番運用の中では基盤のアップグレードの迅速化など、コスト面以外の効果も大いに期待できるのではないかと思います。最後になりますが、「M’sSCaY NEO」の今後の展望についてお聞かせ下さい。

間宮 クラウドベンダーとのハイブリッドクラウド環境を見据えていて、VCFベースの「VMware Cloud™ on AWS」などとの連携を検討しています。オンプレミスベースではなく、クラウドを使って提供することで、拡張性や柔軟性など今まで以上の機能を提供していくことを考えています。

今村 現在オンプレミス基盤の更改などを検討している企業へのアドバイスがありましたら、お願いします。

間宮 今回、私たちは基盤管理に関して自分たちでできることは自らやっていくことを目的にしたので、VCFは最適なソリューションでした。基盤を迅速にアップグレードできるようになることでのセキュリティ向上・運用コストの低減と合わせ、VMware vSAN™やVMware NSX®なども含めた検証済の統合パッケージを利用することでの運用効率向上が得られています。同じようなゴールイメージ目指すのであれば、VCFを構成しているVMware製品を理解するところから始めることが必要です。その上で、運用をどう効率化していくのかを自社の事業・基盤特性に沿って考えていくことで方向性が見えてくると思います。

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