「やはり社長の思いは大事です。トップインタビューにより、その会社の強み・弱み・ビジネス機会・将来を見据えた働く環境などを引き出すところからスタートします。プロジェクトゴールを共通理解した上で、社員を巻き込んだワークショップへと入っていきます。社員の代表者を集めて、変革の狙いを説明し、社員同士でありたき姿を描いていくのです。

 最初はやらされ感があるので白けていることが多いのですが、何度かワークショップを重ねていくうちに、だんだん自分ごとになっていく。オフィス空間を作るプロジェクトだったはずが、結果として会社そのものについて考えるきっかけになるんですね。移転という会社の一大イベントを通じて、社員の一体感を生み出していくことが大切です」(前田氏)

 そうして数カ月をかけた移転プロジェクトでは、新しいオフィスでの生活ルールや施設の運用ルールなどをまとめたオフィス運用マニュアルの作成支援など、最終的な移転後の定着支援までを一貫して行うことが多いと前田氏は語る。

トライアルから始めるICT活用

 昨今のオフィス移転で欠かせないのが、ICTの活用だろう。例えば内田洋行が取り扱う無線対応プレゼンテーション用機器の「wivia®」や「ClickShare」を使えば、簡単に画面共有を行うことができ、来客者を交えた会議もスマートに進めることができるし、会議室予約・運用システムの「SmartRooms」を使うことで、グループウェアと連携して煩雑な会議室予約をスムーズに行うことができる。これらのICT機器もレンタルが可能である。

2ヵ所のスクリーンと2台のプロジェクターを設置したマルチスクリーン環境。複数の資料やデータを投影して比較検討もできる

「会議というのは、多くの人が集まって限られた時間の中で結果を出さなければならないという意味で、ICT導入前後の成果が見えやすい。しかし、全社的にツールをいきなり入れるのは不安だというお客様も多くいらっしゃいますので、TrendRentでお試しいただくケースが増えてきています」(海老氏)

 東京の平均空室率は2018年4月現在で2.65%(三鬼商事調べ)。大規模なビルが建つと大手が移転して、空いたところに中堅企業が玉突きで移転するという動きが出るが、昨年は新築ビルがほとんど建たなかったために空室率が下がっているというのだ。

 しかし、今年から2020年にかけて新築ビルの竣工が続く。それを契機に、2次移転、3次移転のラッシュが今後3〜4年間続くだろうと前田氏は予測する。

「建築条件さえ合えば築30〜40年の古いビルでも蘇らせることはできます。逆に古いビルの方が、好き勝手できる場合もある。本移転を見据えて、様々なICT機器を試したり、フリーアドレスが機能するかを試すなど、オフィス変革のトライアルをしていただく上で、今が絶好のチャンスです」(海老原氏)

内田洋行では管理職専用でトライアル使用しているデスク。相談に来る部下と目線の高さを同じにすることで、コミュニケーションの活性化を促す狙いだ

 ICT機器で取得したデータを活用しながら、会議室や座席など、自社のオフィスに最適なファシリティの数を見極めておくことは、移転によるコスト削減と生産性の向上を両立させる上では、非常に重要なポイントだ。

「移転することで発生するコストと、移転後のオフィスで働き方が変わることで営業マンの成績が良くなるとか、アウトプットにかかる時間が短くなるといった期待できる利益を突き合わせながら、移転後の成果目標を定めた上でスタートするというのが、新しいオフィスの作り方です。

 プレリサーチから運用支援まで、専門性の高い人材と一緒に移転のストーリーを作ることで、オフィス改革が成功するのではないでしょうか」(前田氏)