Xでは、プロジェクトを評価(Judge)するのではなく、洞察し理解すること(Discern)が行われているそうです。

 Xを統括するテラー氏は、「未来は誰にも分からないということです。予知しようとするのはとても危険なビジネスです」と言っています(2016年のインタビュー)。Xでは、プロジェクト(製品)よりもプロセスが重要なのです。どこに到達するかは分からないが、今これをやるプロセスには大きな意味がある、という考え方です。

斬新なアイデアを評価することの難しさ

 どんなプロジェクトでも、それに取り組んでいる途中は、世の中にある他の立派な成果と比べると、ショボく、不完全なものに感じられます。しかし、不完全に感じられるのは当たり前なのです。完成途上のアイデア段階のものを、世の中で既に評価の固まった完成品と比較して、早々に評価してしまうことは大きな弊害をもたらすといえるでしょう。

 2003年、それまでの映画に登場したヒーローおよび悪役キャラクターのトップ100が米国で選ばれ、話題になりました。

 ヒーローの第3位は007のジェームズ・ボンド、第2位はインディアナ・ジョーンズでした。では、トップになったヒーローは誰でしょうか?

 意外に思われるかもしれませんが、ヒーローキャラクターの第1位は「アラバマ物語」(原題 "To Kill a Mockingbird" )の主人公、グレゴリー・ペック演じるアティカス・フィンチでした。

 恥ずかしながら私は大昔に映画を見た記憶もおぼろげで、どんな主人公だったかも思い出せません。しかし、原作の小説 "To Kill a Mockingbird" は、全世界でこれまで400万部売れており、今でも毎年10万部くらい売れている超ベストセラーです。