自動運転技術や「Uber」のようなアプリを介した配車サービスの発達など、近年話題を集めているクルマのIoT。今後さらなる技術の発達により、我々の生活は豊かになっていくだろう。それと同様に、現在、関心を向けられているのが「鉄道」におけるIoTだ。通勤や通学時に電車を利用する人からすると、鉄道業界がIoTをどう見据えているのかは気になるはず。そこで今回、JR東日本が取り組むIoTについて話を伺った。

車両や駅構内のリアルタイム情報を届ける「JR東日本アプリ」

現在、JR東日本が提供するIoTサービスとして代表的なものが「JR東日本アプリ」だ。

「このアプリは、JR東日本をご利用いただくお客さまに便利で快適な移動をサポートする目的で開発しました。すでに鉄道関連の便利な情報提供サービスは存在していますが、私たちはJR東日本ならではの情報を提供することに主眼を置きました。たとえば、列車の運行情報、列車位置のリアルタイム情報、駅構内やエキナカ店舗の情報などです」(JR東日本担当者、以下同)

列車の状況は刻一刻と変化する。だからこそ、リアルタイムな情報を届けることができるIoT機能との親和性は非常に高いといえるだろう。列車の走行位置、各車両の乗車率などは随時地上にあるサーバーへと送られ、アプリを通してユーザーへと知らされる。また、車両のブレーキや空調制御のために設置されていたセンサーを利用することで、各車両の室温や外気温といった情報も届けられるようになった。

混雑具合や室温など、車内の状況が一目瞭然

さらに、まだ限定的ではあるものの、駅構内にあるコインロッカーの空き情報も閲覧することができる。大荷物を持って空きロッカーを探すのは非常に骨が折れるため、アプリひとつでその情報を確認できるのはユーザビリティが高いサービスといえそうだ。この機能には、Suicaで施錠・解錠できるロッカーのシステムを流用しているという。

「お客さまの満足度を高めるために、情報提供が重要であることは事前の調査で認識していました。駅や車内に情報ディスプレイを設置したり、駅員や車掌による放送でのご案内を充実させたりしてきたのもその一環。そこで、さらなる満足度向上を目指した際に考えついたのが、モバイルを活用したサービスだったんです」

プロジェクトが立ち上がり、無事リリースするまでには一年を要した。その間は苦労の連続だったそうだ。

「社内のあちこちに存在するデータを集約するための、安全で安定的なシステムを構築すること、そして集約したデータをわかりやすく提供するためのユーザーインタフェース、ユーザーエクスペリエンスの設計に苦心しました。開発にあたり何度も議論を重ねましたし、リリース後もこまめにリニューアルやアップデートを続けています」

その甲斐もあり、ユーザーからの反応は非常に大きい。

「アプリ公開当日は、App Storeの国内無料アプリDLランキングで3位になりました。それは喜ばしいことでしたが、想定以上の反響だったため、しばらくは動作が不安定でご不便をおかけしてしまったのが反省点です。近々、また新しい機能を追加する予定ですので、引き続き注目していただけるとうれしいですね」