幕末と言えば、尊王志士が掲げた「尊王攘夷」というスローガンを、連想される読者が多いのではなかろうか。これまで、尊王攘夷運動こそ、倒幕をもたらして明治新国家を建設できた原動力であったと理解されている。一方で、攘夷の定義となると、意外と難しいのではなかろうか。 攘夷を定義づけする前に、重要な関連性がある鎖国とは何か、そこから考えてみたい。鎖国とは、17世紀前半にできあがった対外政略であったが、具体的には、日本人の海外渡航・帰国を厳禁し、外国船を追い払うことを骨子としており、キリスト教を徹底的に排除することであった。 しかし、鎖国完成時の日本人にとって、これらの行為は幕末人が唱えた「攘夷」とは、まだ