幕末維新史の主役と言えば、長州藩を思い浮かべる読者は多いのではなかろうか。そのイメージと言えば、尊王攘夷運動の旗頭であり、下関で攘夷戦争を実行するなど、即時攘夷を牽引し続け、最後に倒幕を成し遂げた西国雄藩の代表に落ち着こう。 また、吉田松陰は長州藩を代表する過激な尊王攘夷家であり、松下村塾を主宰して多くの尊王志士を育て上げた。しかし、大老井伊直弼による安政の大獄に巻き込まれ、刑死した悲劇のヒーローとして、広く知られた偉人であろう。 しかし、歴史を紐解くと、長州藩、そして吉田松陰は最初から最後まで即時攘夷に一辺倒であったわけではない。未来攘夷と即時攘夷を行ったり来たり、彷徨しながら即時攘夷に収斂