世界各国から集まった自動車分野のジャーナリストたちがまずはZFの技術ビジョンと最新技術のプレゼンテーションを受ける。この日は日本を含めてアジア・パシフィック地域から集まったメンバーが主体だった。(写真提供:ZF)
ジャーナリストに向けて総合的なビジョンと、背景に映る9HPをはじめとする技術群の概要を語るZFの経営会議メンバー7人の1人、ミヒャエル・ハンケル工学博士。パワートレインとシャシー全体の責任者でもある。(写真提供:ZF)
まもなく市販車に搭載されて市場に現れるエンジン一体横置きするレイアウトに対応した9速オートマチックトランスミッション「9HP」。内部構造を示すための断面透視図である。図の左手前がエンジンとの結合面で、円環状の空間を持つ大きな部品がトルクコンバーター。そこから右奥に向けて4組の遊星歯車とそこに回転を伝えたり、固定したり、開放したりする変速機構(多板クラッチなど)がびっしりと組み込まれている。手前側の断面に小径の歯車が3つ見えているが、これらは内外に組み合わされるギアセットの中間位置にあって自転と公転の両方を行う「プラネタリーギア」。図の左手前側に張り出している部分が最終減速ギアとデファレンシャルギアを一体化した駆動軸出力部分。(図版提供:ZF)
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9HPの変速を作り出すプラネタリーギア(遊星歯車)4組を取り出した展示。おそらく今回のワークショップが世界初公開。この写真では右手がエンジン側となる。遊星歯車組を分離しているので、右側に2組、同じサイズのプラネタリーギアが見えている。それぞれ左側に見えるリングギアの中に組み込まれる。この連星系のような歯車組が相互に回転したり、一体に回転したりすることで異なる変速比が得られる。中央あたりに見える比較的大きな歯車は、内側に小さな遊星歯車組が組み込まれていて、外周に切られた歯車が左端の大きなプラネタリーギアの内側に組み込まれるサンギアとなり、内外二重の遊星歯車組を形成する。その手前に置かれている小さめの円筒形部品は、チェーンで駆動されるオイルポンプ。これも内部損失を減らす設計手法の1つ。(写真:筆者)
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遊星歯車組が並ぶ主軸上に設けられたドグクラッチの噛み合い部分。軸の周上に切られた細い溝が、その上に入り込むリング状部品の内面に切られた同じ形状の溝・山と噛み合うことで回転を伝える。一般的な湿式多板クラッチはつながりはスムーズなのだが、開放状態でも摩擦面同士の間で「引きずり」が残る。これに対してこの純機械的結合機構だと、切り離した状態での引きずりを最小限に抑えられる。外側のリングが最初に接触する面(写真では左側)が斜めになっていて、接触して回転を同調させる効果を生む。(写真:筆者)
今回、ジャーナリストの体験試乗のために用意されていた9HPを搭載するレンジローバー・イヴォークの開発実験車が、ドイツの日常的道路環境を駆ける。2リッター・ガソリンエンジンとの組み合わせは、すでに市販車としても相当に洗練されたレベルに到達している。9速化による巡航時エンジン回転の低下、そこから細かく変速比を変えて必要な力を瞬時に引き出す能力を実際に体験した。(写真:ZF)
外観、内装ともに現行イヴォークそのものだが、開発車両であることを唯一示していたのが、ダッシュボード中央に仮設されたディスプレイ。左側列の上部にエンジン回転、下部には次に選択する可能性が高いと判断して変速準備を始めたギアポジション、実際に入っているギアポジションなどが表示され、限られた時間の中での「味見」にはとても有益だった。(写真:筆者)
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