情報の量と精度、そしてハブという課題
「3点目として、登録率の低さが挙げられます。これは、登録必須の項目が少ないという言い方もできます。登録時の入力項目は約500項目ありますが、必須項目は『売り出し価格』、『占有面積』、『住所』、『間取り・部屋数』、『取引形態(専属、専任、一般)』の5項目だけです。リフォーム費用を大きく左右する『建築工法』、『増改築歴』といった項目の登録率は50パーセント未満という状況です。
そして4点目が情報鮮度の低さが挙げられます。MLSが契約後24時間~48時間以内の登録義務なのに対して、REINSは1週間~2週間以内の登録のため、情報の更新頻度が低くタイムリーな情報が取得できないのです」
テクノロジーに欠かせないのが情報の量と精度だ。それが圧倒的に不足している現状が、「不動産テック」の波を大きなうねりにすることを阻害しているわけだ。さらに、その情報があっても、活用するために紐づけていくハブにも課題がある。それが課題の5つめとなる。
「5点目の課題として、公開APIが挙げられます。米国には約800あると言われるエリアごとのMLSのデータベースを集約・統合しているListHubと呼ばれる会社があります。ListHubは、不動産広告会社や不動産仲介会社などへ公開APIを通じて最新の物件情報などをほぼリアルタイムで提供する。これに対してREINSは外部公開されたAPIは存在しません。不動産情報基盤に対する課題に対して、国交省はREINSに物件情報だけでなく住宅履歴情報やマンションの管理状況など多くの情報を紐づけ一覧できる不動産総合データベースを推進していますが、現在のところ道半ばです」(川戸氏)
望まれる日本独特の不動産テック
不動産テックが普及・拡大するためのハードルは他にも存在するようだ。例えば、不動産業の業界構造もそのひとつだろう。住宅は業界団体の影響も強く旧態依然で、不動産テックを敵と見なすような誤解・先入観が未だに根強いことが想像できる。
使うツールは象徴的で、不動産業界の現場は、未だに紙・電話・FAXによる業務が主流である。それは、賃貸住宅を借りる場合や住宅を売買した時に感じたことがあるだろう。業者からの連絡は電話であったり、様々な種類の書類を要求されたり、契約書など大量の紙を渡されたりする。