2.内見した後も契約まで一気に完結するVR

VR内見、電子契約

 VR(バーチャル・リアリティ)と言えば、ゴーグルをつけゲームなどのエンタテインメント分野での発展が指摘されるが、不動産業界にも確実に期待されるサービスである。そのひとつがVR内見。川戸氏がこう説明してくれた。

「VR内見とは、3DモデリングのVR技術を活用した物件の擬似内見をインターネット上で提供するサービスです。VRを活用した物件の擬似内見は、不動産会社のWebページ等での活用が一般化してきています。NURVE(ナーブ)社の「VR内見」は、不動産店舗におけるお客様との対面接客に活用することで、内見現場へ行く前の擬似内見が可能となり、内見する物件の取捨選別の確度向上や業務効率化に繋がっています」

 部屋の内見となると、より詳しく見るには現場に行くのが常であった。しかし、それでは内見できる物件に限りがある。1日3件でも見ることができれば御の字、といったところだろうか。

 VRサービスは、こうした選択肢の少なさを大きく改善する。一方で、不動産業界にとっても閲覧数が増加することは売約増につながるはずだし、人件費を含めた効率面でも一石二鳥のサービスと言えるだろう。

「NURVE社の場合、見逃せないのが室内画像の取り込みです。動画データとしてスマートフォンで誰でも簡単に取り込むことができ、様々な視点からの室内画像のスナップショットを作り出せる。容易に物件広告用の室内画像が作成可能となるのです。アウトプットの側面が注目されがちなVRの、インプットの側面の有用性が評価されるのは、物件の室内画像の撮影業務という業者側の業務課題に起因しています」(川戸氏)。

 この点において、川戸氏は賃貸取引における新しい動きについての相乗効果を期待する。

「2017年にIT重説が賃貸取引のみ本格的に開始されています。IT重説とは、インターネット等を利用することで従来の対面以外の方法で不動産の売買契約や賃貸借契約における重要事項説明を行うことです。現時点では、IT重説に対応している不動産会社はまだ一握りですし、賃貸だけではありますが、IT重説が解禁したことで、賃貸取引プロセスのオンライン化が実現可能となります」

 川戸氏が言う「IT重説」が本格化すれば、不動産ポータル上で物件を検索し、VR内見もしくはオンライン内見予約・スマートロックによる内見自動化、そして、気に入った物件があればWeb会議システムで重要事項説明、後は電子契約と取引プロセスを一気通貫でオンライン化することが可能になるということだ。

「実際、VR内見のNURVEは2017、2018年頃より急速に拡大し約5400店舗以上へ導入しています。電子契約では「クラウドサイン」や「DocuSign(ドキュサイン)」、「IMAoS(イマオス)」、申込から契約締結の一連のプロセスを電子化した業務プラットフォーム「キマRoom! Sign(キマルームサイン)」などが広がり始めています」(川戸氏)