JBPRESS

米国や中国発ネット通販大手などの台頭により、モノの売り方、買い方が大きく変化している。それによって小売業、特にリアル店舗が受ける影響は小さくない。ただ、リアル店舗には買い物の楽しさをもたらす特有の利点もある。これを最大限生かすには、スムーズな決済など、ネット通販に伍する利便性を備える必要がある。小売の現場を見つめ続けてきたNTTデータの「CAFIS」が、多様なソリューションでその実現を支援する。

お客様にとって決済が ストレスになってはならない

福田 昭弘 氏 商品を手にとって買いたいというニーズは今後もなくなりません

株式会社 NTTデータ
ITサービス・ペイメント事業本部
カード&ペイメント事業部
営業統括部長
福田 昭弘

 リアル店舗にとって大きな脅威となりかねない国内外の大手ネット通販が、「速く・手軽に・安く」と、生活者の購買体験(UX)に大きな変革をもたらしている。中には、「ネット通販が拡大すれば、いずれリアル店舗はなくなる」との観測すら聞かれる。株式会社 NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 カード&ペイメント事業部 営業統括部長の福田昭弘氏は、それに対して「コモディティ化された商品、例えばペットボトルの水をまとめ買いするような場合であれば、ネット通販で購入した方が、玄関まで配達してくれるので便利かもしれません。しかし、商品を手にとって大きさや色、重さや素材感などを比較検討しながら買いたいといったニーズは、今後もなくなることはありません」と指摘する。たしかに店員と会話をしながら、おすすめの商品を提案してもらうといった楽しみは、リアル店舗ならではだ。

 ただし、福田氏はこうつけ加える。「せっかく購入を決めたのに、レジが長い行列になっていたり、クレジットカードを預けた店員がなかなか戻ってこなかったりというのでは、買い物の楽しみも半減してしまいます。商品を選んだらスムーズに決済を終えたい。そのニーズに応えられないと、『商品は気に入ったけれど、買うのはネットで』ということになってしまいます」。これでは元も子もない。

 スムーズな決済を実現するのは、クレジットカードや電子マネー、そしてQRコードなどを使った各種のペイなどの「キャッシュレス決済」だ。株式会社 NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 カード&ペイメント事業部 戦略・ビジネス企画統括部長の渡邊賢氏は「当社は35年前から、クレジットカードなどのキャッシュレス決済プラットフォームCAFISを提供し、決済手段の多様化に合わせてサービスを進化・拡充させてきました」とし、さまざまな業態・業種の小売店と、国内ほぼすべてのクレジットカード会社・金融機関を結ぶ国内最大級のキャッシュレス決済のプラットフォームを運用してきた実績に触れる。そのNTTデータが今、さらに質の高いUXの提供に向けて新たな打ち手を用意している。

多様な決済手段に対応できる 「CAFIS Arch」と「CAFIS Pitt」

 QRコードを使ったスマートフォン(スマホ)決済サービスが急成長している中国や、非接触型の銀行キャッシュカードの普及が進む英国など、世界ではキャッシュレス化が着実に進んでおり、日本の対応の遅れが指摘されている。リアル店舗の質の高いUX提供を考えても対応は急がなければならないが、ハードルもある。

 小売の現場を見つめてきた福田氏は次のように語る。「小売店では新しい決済サービスが登場すると、そのたびごとにレジ周りに端末が増え、スタッフは使い方を覚えなければなりません」。どの店舗も人的リソースが限られる中、決済端末の操作や習熟に労力を奪われ、「快適で楽しい買い物をしていただく」という本来の業務に支障が出かねない状況になっているというのだ。

渡邊 賢 氏 商品を手にとって買いたいというニーズは今後もなくなりません

株式会社 NTTデータ
ITサービス・ペイメント事業本部
カード&ペイメント事業部
戦略・ビジネス企画統括部長
渡邊 賢

 渡邊氏は「小売業にとって、決済はコア業務ではありません。お店に来られるお客様も、決済をしに来店しているわけではなく、商品をスムーズに購入したいだけなのです。しかし、加盟店が多様なキャッシュレス決済に対応するためには、既存システムの改修や新システムの構築が不可欠で、新しい決済手段を導入する際の障壁となっていました」と指摘する。こうした小売りの課題や障壁を取り除くために開発されたのがCAFISのソリューションの数々であり、中でもリアル店舗で大きな役割を担うのが、「CAFIS Arch(キャフィス・アーチ)」と「CAFIS Pitt(キャフィス・ピット)」だ。

「CAFIS Arch」の大きな特長は、一つの端末でクレジットカード、デビット、電子マネー、非接触IC、国内外QRコードなど多彩な決済手段に対応できることだ。これは、「CAFIS Arch」がクラウド型総合決済プラットフォームであるからこそ実現できるものであり、「レジ回りに多くの端末がひしめく」状態は、一気にスリム化できる上、スタッフの負担も大きく軽減される。また一度導入してしまえば、サーバー上のアプリケーションを追加・更新するだけで、新しい決済手段を加えたり、既存のアプリケーションをバージョンアップできたりする点も大きなメリットだ。多様な決済手段に対応することは、昨年3000万人に達し、さらなる増加が予測されるインバウンド(訪日外国人)の取り込みにも有効だ。

 一方「CAFIS Pitt」は、加盟店が顧客とのコミュニケーションを深化させるのに欠かせないセールのお知らせやクーポン、ポイントなどを行うスマホアプリと、自社ペイによる決済機能を両立させたスマホ決済プラットフォームだ。これによって一般的なサードパーティーペイに対応することで集客を図りながら、アプリと自社ペイで顧客囲い込みと顧客の購入履歴を踏まえた施策立案など、データに基づくマーケティングを行うこともできる。もちろん顧客としても、財布の会員カードを取り出しつつスマホではアプリを立ち上げて支払いなど、これまでの煩わしさから解放される。

「今やスマホは生活に欠かせない存在となり、他のものは忘れてもスマホだけは忘れないというほど重要な存在になっています。そのスマホを使って決済したいというニーズは、極めて自然だと考えます」。福田氏はこう話し、今後キャッシュレス決済のスタンダードがモバイルを中心としたものになると予測する。こうした必然的なトレンドを確実に捉えながら、セキュアな環境で実行できるテクノロジーを持つ点において、NTTデータはリーディングカンパニーとしてゆるぎない存在感を示している。

5年後、10年後に生き残るための 高い付加価値を提供

 今後、小売店における購買のシーンはどのように変わっていくのか。「インバウンドのお客様が増加していることも含め、お客様の多様な決済手段に対応できなければ、販売の機会を逸することになるでしょう」と話す福田氏だが、先述のようにさまざまな施策と店頭のオペレーションの複雑化は両立しづらい面がある。これに対して「本当の意味で小売の現場でイノベーションを実現するためには、UXと従業員体験(EX)双方を高める必要があります」(福田氏)とし、NTTデータが今後目指すべき理想の決済シーンについて、こう付け加える。

「キャッシュレスや働き方の先進国である北欧では、レジに店舗スタッフがおらず、セルフレジで支払うというシーンも多くなっています。決済に店舗スタッフが介在する必要がない仕組みをつくり、店舗スタッフはお客様に価値を提供することに専念できる仕組みは、働き方の変革にもつながります。日本でもこうしたフリクションレスで決済を意識しない買い物が当たり前になるかもしれません。そのときに生き残れるのはどういう店舗なのかを考えて、準備をする必要があります。私たちはこれを突き詰め、小売業の皆様にこれまで以上に高い付加価値を提供していきたいと考えています」(福田氏)

 もちろんそれを担保するテクノロジーにも抜かりはない。渡邊氏は「当社にはさまざまな業態・業種の企業のビジネスを支援してきた経験とノウハウに加え、AI(人工知能)を活用した認証やRFID(無線自動識別)タグなど、さまざまな先進的なテクノロジーを持っています。これらを生かしながら、お客様はそれを意識せず快適に買い物をしていただける環境を構築することが、私たちの役割だと感じています」と語る。

 CAFISは、昨今話題のスマホによるQRコード決済をはじめ、より利便性の高い決済手段をスピーディーにリリースし、決済プラットフォーマーとして生活者のUX向上に寄与している。

 中でもCAFIS PittやCAFIS Archは、手間やコストである決済そのものをフリクションレスにし、顧客の利便性向上はもとより、従業員の業務効率向上をも実現する。これによって店舗では、解放された時間と人員を顧客とのコミュニケーションへとシフトできる。同時に顧客との接点から得たデータの活用が小売りの未来を拓く。データに基づく打ち手が、送集客施策、ロイヤルティ深化を実現し、確かな決済機会を生み出していく。CAFISは決済プラットフォームであるだけでなく、経営改革をも促す小売りのパートナーと言える。