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eコマースの普及で、スマホやタブレットがあれば、いつでもどこでもすぐに欲しいものを買えるようになった。時代は、これに匹敵する手軽さ・便利さを、リアル店舗にも求めている。NTTデータはその課題を徹底的にリサーチするとともに、店舗ならではの購買行動をより便利に改革するクラウド型決済プラットフォームと新開発の端末を組み合わせたサービスの提供に乗り出した。顧客の購買体験を向上させ、店舗スタッフの負担軽減、売上向上を実現する新サービスの姿を明らかにする。

リアル店舗の復権を可能にする 新しいクラウドサービスの開発を!

冨田 誠 氏

株式会社 NTTデータ
カード&ペイメント事業部 ソリューション営業担当
課長
冨田 誠

 GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表されるグローバルプラットフォーマーが世界を大きく動かしている。中でもAmazonを筆頭にネット通販の台頭は、消費者の購買行動を一変させた。わざわざ店を訪れなくても、自宅や外出先からスマホやタブレットでアクセスし、目当ての商品が購入できる。それがどんな人気商品であっても同じだ。その場でクリックすれば、あとは商品の到着を待てばよい。対してリアル店舗はどうか。消費者は店舗に出向き、売り場を歩いて欲しいものを選び、会計の列に並ぶ必要がある。いまリアル店舗は、ビジネスモデルの転換期を迎えている。

 一方リアル店舗には、eコマースでは得られないメリットが依然として存在する。何を買うでもなく、アパレルのお店に入り、店員とコミュニケーションをするうちに、自分の欲しい服のイメージが湧くこともあれば、顔なじみのスタッフが、これまで関心のなかったアクセサリーを、「こういうものも似合うのでは」と勧めてくれることもある。これらは、eコマースサイトの「おすすめ機能」では得られない豊かで楽しい“購買体験”だ。

「こうした魅力の一方で、混雑したお店でたった一個の商品を買うのに長々とレジに並ばなければいけないなど、顧客がより強く“決済を意識する”瞬間があります。これが、リアル店舗の“機会損失”につながりかねません。決済の面からこれを解決し、消費者にもっとスムーズな購買体験を与えようというのが、すでに多くの方にご利用いただいている『CAFIS Arch』と、今回導入する新しい決済端末を組み合わせたサービスです」と、株式会社NTTデータ カード&ペイメント事業 ソリューション営業担当 課長 冨田 誠 氏は語る。

顧客体験を低下させている 「決済という障壁」をどう取り除くか?

中原 敬之 氏

株式会社 NTTデータビジネスシステムズ
第一システム事業本部 ビジネスソリューション事業部
ビジネスソリューション企画営業部
課長代理
中原 敬之

 NTTデータの「CAFIS」は、さまざまな業態・業種の加盟店と、国内ほぼすべてのクレジットカード会社・金融機関を結んでいる国内最大のキャッシュレス決済の総合プラットフォームだ。CAFISには、スマホ決済プラットフォームの「CAFIS Pitt」など、多様な機能があるが、その一つであるCAFIS Archは、「クラウド型総合決済プラットフォーム」という位置付けになる。

 これまで冨田氏はCAFIS Archを介して、多くの小売業の経営者やスタッフの生の声を聞いてきた。彼らがネット通販への危機感を強く抱きながら、具体的にどんな対抗策を取るべきなのか悩む姿に、CAFIS Archのクラウドサービスならではの特長を生かした、新しい決済モデルの発想の原点がある。それをNTTデータでは、「PoT(Payment of Things)」という独自のコンセプトに込めた。これはいわば「決済におけるIoT(もののインターネット)」を意味している。今回のハイブリッド端末が、まさにそれを実現しようとしている。

 開発にあたって目標にしたのが、リアル店舗の“機会損失”を招いている原因の究明と解決だ。そこから見えてきたのは、レジに並ぶ「面倒くささ」や「時間のロス」。店員と会話が盛り上がって購入を決め、店員が受け取ったクレジットカードを持ってお会計に行っている間の「テンションの低下」。これらは顧客の購買プロセスに停滞や空白をもたらし、ユーザー エクスペリエンスの質を下げ、リアル店舗離れを進行させかねない。

「加えてリアル店舗では、お客様は商品を持ってレジまで移動しなくてはなりません。ならば商品を見つけたその場で決済できれば高まった気持ちを損なうことはありませんし、ムダな動きをしなくて済みます」と語るのは、株式会社NTTデータビジネスシステムズ 第一システム事業本部 ビジネスソリューション事業部 ビジネスソリューション企画営業部 課長代理 中原敬之 氏だ。

 こうしたリアル店舗におけるカスタマー エクスペリエンスの向上を目指してリリースされたのが、クラウドサービスであるCAFIS Archの新ラインである「ハイブリッド端末」だ。その名の通りクレジットカードの他スマホ決済でも対応し、“いつでもその場で”決済が完了する。「これ1台ですべてのキャッシュレス決済処理が完結できますし、店員が持ち運ぶこともでき、お客様から声を掛けられたら、その場で決済することができます。クレードルに設置しておけば、セルフレジとしても使えます」(冨田氏)。これがまさにPoTの概念そのものを具体的に表す存在であり、ここに、リアル店舗の弱みを調べ抜いてサービスを設計した成果が見事に現れている。

売り方そのものを変える画期的な決済機能 もちろん情報セキュリティ機能も万全

 CAFIS Archと新しいハイブリッド端末のもたらすメリットを見てみたい。冨田氏は、「どこでも決済できるようになると、小売業の売り方そのものが大きく変わると考えています」と示唆する。

 例えば家具店。お客さんが店員に相談しながら欲しいベッドを決め、店員がクレジットカードを預かってレジに行くと、そこで両者の会話はいったん途切れてしまう。ところが手元にハイブリッド端末がれば、会話を続けながら決済を完了。盛り上がった雰囲気をそのままに、「もうベッドカバーや読書スタンドは選ばれたんですか。いいのがあるんですがご覧になりますか」と、他の商品のリコメンドに話しをつなげていけるかもしれない。顧客も悪い気はしない。カードを渡したまま放置されるよりずっと楽しく、お店や店員への好感度も高まる。こうした変化が、来店からクロージングに至るまでの話法やプロセスシフトさせ、より“売れる”、“喜ばれる”店舗へと変わっていく。

CAFIS Archで用いる新しいハイブリッド端末

CAFIS Archで用いる新しいハイブリッド端末は、スマートフォンに似た極めて小型の端末だ

 一方中原氏は、このハイブリッド端末の将来的な活用方法一つとして、例えば社員のスキルアップにも貢献できるのではないかという。店員が接客中に端末を使って商品や価格の説明・確認などを行い購買までつなげると、システムに記録が残る。そのデータを分析するのだ。「購買プロセスをいろいろな角度で分析することにより、売り上げを伸ばすヒントも得られますし、売れる人のノウハウをスタッフ全員で共有できます」(中原氏)というから、もはや単なる決済ソリューションの領域を超えた、多様なポテンシャルが見えてくる。

 クレジットカードなどの貴重な個人情報を扱う上でも、この新しいソリューションは万全だ。もともとクラウド型総合決済プラットフォームであるCAFIS Archは、端末にデータを持っていないシンクライアント型のサービスだ。個人情報はすべてネットワーク経由でNTTデータが管理・運用するクラウド上に保管されるため安心だ。

 「決済の際にハイブリッド端末で読み取ったクレジットカードの個人情報は、CAFIS Archに直接取り込まれ、お店側に残りません。今対応が迫られている小売店舗でのカード情報の非保持化にも対応しています」(冨田氏)というから、いわば一石二鳥のソリューションと言える。

「PoT=決済におけるIoT」を推進し リアル店舗のイノベーションを目指す

冨田氏と中原氏

 今回のCAFIS Archの新ラインである「ハイブリッド端末」による決済サービスは、2019年2月リリースを目標に実証実験が進められている。現在行っているのは「セルフ決済」のトライアルだ。お客さんは買いたい商品があれば、店内に配置されたハイブリッド端末を使って、自分で手軽に決済処理ができる。

「導入の結果、決済業務におけるお客様一人ひとりに対する店員の関与度が下がることで、業務効率が向上するとともに、よりお客様にとって価値のある業務に注力することが出来ます。また、レジに並ばないので決済までの時間短縮が実現できます。人員配置の効率化や省力化、そして売上向上が実現できると期待しています」(中原氏)。と、実証実験の効果は上々だ。これはまさに、CAFISの目指す“決済のフリクションレス化”、すなわち決済を顧客に意識させないスムーズで快適な顧客体験の提供につながると同時に、店舗も決済に対応していたリソースや時間を解放でき、付加価値業務の稼働にシフトできる。これは店舗の働き方改革にもつながるものだ。

「CAFIS Archというクラウドの仕組みを活用することで、いつでも、どこでも、商品選択から決済までのプロセスを通じたフリクションレスな購買体験を、リアル店舗の世界に提供していきたいと願っています」と抱負を語る冨田氏。今回のハイブリッド端末にはすでに各社からの引き合いが来ており、リリースと同時に稼動を予定している大規模ユーザーもあるという。リアル店舗の購買体験をシフトしたいと考える経営者は、この全く新しい決済の潮流から目を離せないはずだ。

NTTデータは「リテールテックJAPAN 2019」に出展いたします。
「New Retail, New Life」と称し、
35年の実績を持つ国内最大の決済プラットフォーム「CAFIS」を中心に、
購買体験や店舗業務をデジタルで変革する様々なソリューションを紹介いたします。

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