2018年問題 ―少子化が進む我が国において、近年小康状態を保っていた18歳人口が再び減少に転じる。大学は全入時代に突入し、数字上は進学希望者のほぼ全てが入学できるようになっている今、単なる「大卒」という肩書に以前ほどの大きな意味はない。望めば誰でも入れるようになった大学で、いったい何の価値が得られるのだろうか。
大学全入時代だからこそ、大学で「何を学び」「誰と出会い」「どう成長できたのか」という過程と結果が重要だ。自身の成長や良質な人的ネットワークの構築こそが、その後の人生においてかけがえのない宝になるからだ。大卒で得られる「学士」という証書よりも、このかけがえのない宝こそが大学で得るべき価値といえるだろう。
この特集では、そこでしか得られない価値を高めている大学のキーマンにインタビューを実施。その実態と本音に迫った。
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駒澤大学
禅の思想を基盤とし、
学ぶ楽しさを伝える
自分を生かすことは、他人を生かすこと - 上智大学
「最上の叡智」を育むため、
「日本のミヤコ」に設立された大学
グローバル教育のパイオニア
だからこそ実現した、
多くの国際機関との緊密な連携 - 同志社大学
「大学の完成には200年かかる」
大学のあるべき姿に向かう同志社大学
日本開国時の「危機感」
「問題意識」が今日的な課題に - 日本工業大学
キャンパスの内も外も学びの場。
地域社会と連携して
“ものづくり”を体験学習
“ものづくり”の本質を追求する学びには、全国から学生が集まる - 日本女子体育大学
烏山地区の地域コミュニティの
核を目指すニチジョクラブ
23区初となる大学主催の
総合型地域スポーツクラブを結成
- 武蔵野大学
臨海副都心で変革を続ける武蔵野大学
「法」「経済」「工」学部開設・・・
そして次の一手は
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駒澤大学禅の思想を基盤とし、学ぶ楽しさを伝える自分を生かすことは、他人を生かすこと
駒澤大学の前身は、文禄元年(1592年)、江戸駿河台にあった禅寺にあった学問所だ。今から400年以上も前、豊臣秀吉が政権を担っていた時代である。この時代、寺院は地域文化や産業の中心であり、住民たちの精神的なよりどころでもあった。地域の教育機関としての役割も担っており、その精神は今も脈々と引き継がれている。同校では、「仏教」や「禅」の心を基盤とはしているが、それを前面に押し出すことはない。校内を歩いていても、ほかの大学と大きく違うところはなく、通学する学生も一般の大学生と変わらない。ただ、根底を流れる「仏教」や「禅」の思想は、少なからずキャンパスライフに影響を与えているという。…
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上智大学「最上の叡智」を育むため、「日本のミヤコ」に設立された大学グローバル教育のパイオニアだからこそ実現した、多くの国際機関との緊密な連携
最近、よく巷で「グローバル社会」という言葉を耳にする。辞書で「グローバル」という言葉の意味を調べてみると「地球全体の、世界的な」とある。とすると、「グローバル社会」とは、「地球規模でとらえる社会」という意味になるのだろうか。たしかに、技術の進歩により、以前とは比較にならないスピードで、人やモノが世界中を移動できるようになった。その結果、遠くの地域の人々と隣人のように接することができるようになったのは事実。しかし、その一方で、世界のあらゆる場所に存在している差別や偏見、経済的・教育的な格差は、今もまだなくなってはいない。物理的距離は縮まっても、人の心の中にある距離は、相変わらず離れたままだ。…
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同志社大学「大学の完成には200年かかる」
大学のあるべき姿に向かう同志社大学日本開国時の「危機感」「問題意識」が今日的な課題に京都に学舎を構える同志社大学は、キリスト教プロテスタント系の会衆派教会(組合教会)の流れをくんだ大学。「キリスト教主義」「自由主義」「国際主義」の理念のもと、「良心教育」を展開している。 鎖国を行っていた日本を離れ、米国アーモスト大学で学んだ新島襄は、1875年に「同志社英学校」を創立した。これが、現在の同志社大学の礎となる。当時、勝海舟にむかって新島は、「大学の完成には200年かかる」と述べたとされる。この言葉の真意は、「自分を受け入れた大学と同様の水準にするには、ひとりの人間が生まれて死ぬまでの時間より、遙かに長い時間が必要である」ということだろう。…
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日本工業大学キャンパスの内も外も学びの場。
地域社会と連携して“ものづくり”を体験学習“ものづくり”の本質を追求する学びには、全国から学生が集まる日本工業大学は埼玉県の南部・宮代町に位置し、その敷地面積は東京ドーム5個分。田園風景のなかに、教室棟ばかりでなく、さまざまな実験・実習設備を備えたセンターや、学生生活を豊かに送るための施設が建ち並ぶ。グッドデザイン賞を受賞した生活環境デザイン学科の実験研究棟は、建築の構造から配管設備までのすべてを露出し、いつでも建築の仕組みが学べる。機械実工学教育センターには、生産現場で使われている最新の工作機械がそろい、本物の“ものづくり”に取り組める。…
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日本女子体育大学烏山地区の地域コミュニティの核を目指すニチジョクラブ23区初となる大学主催の総合型地域スポーツクラブを結成
閑静な住宅街で知られる世田谷区烏山に学舎を構える日本女子体育大学は、「ニチジョ」という愛称で親しまれている。1922年(大正11年)に、前身となる二階堂体操塾として開塾して以来、数多くの体育教員やスポーツ指導者などを育成・輩出しているが、最近は烏山地域を中心とする総合型地域スポーツクラブも運営している。総合型地域スポーツクラブとは、身近な学校施設などを拠点とし、地域住民が主体となって運営する多種目・多世代型のクラブのこと。日本女子体育大学教授の齊藤隆志氏は、「最近は、少子高齢化やコミュニティの弱体化により、他人とのコミュニケーションが不足しがちで、また住民の健康づくりやスポーツ推進が思うように進んでいない」と、指摘する。…
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武蔵野大学臨海副都心で変革を続ける武蔵野大学 「法」「経済」「工」学部開設・・・そして次の一手は
大学全入時代。現在は横ばいの18歳人口が減少を始める「2018年問題」に向けて、各大学は生き残りをかけて試行錯誤しながらも有効な変革の道を模索している。そんな中、激化する大学間競争を横目で見ながら、改革にさらに改革を重ね、他とは全く異次元の進化を続ける大学がある。今や中堅の総合大学として9学部14学科を擁するまで拡大した武蔵野大学。その前身は、武蔵野女子大学という単科の女子大だった。この名前に馴染みがあるという人も多いだろうが、少子化による大学進学人口の減少に加え、女子の大学進学率の増加に伴った相対的な女子大の存在意義の埋没といった問題を解決すべく、2004年に男女共学化を決意。…