「データヘルス計画」とは
健康保険組合などの保険者と事業主が協働して、健保加入者の電子化された医療データを活用し、業態や組織ごとの健康状況を分析して課題を見つけ、個々人に応じたきめ細かい保健指導を行い、保健事業の実効性を高めていく取組み。「日本再興戦略」にも、全ての健康保険組合に対して「データヘルス計画」の作成・公表、事業実施、評価等の取組みを求める方針が盛り込まれており、いわゆる「健康経営」の実現や、予防医学を社会に活用していくための切り札として期待されている。
アイ・エム・エス・ジャパン株式会社
取締役バイスプレジデント
湯田 祐一 氏
――「データヘルス計画」は、今どのような進展状況にありますか。
湯田 今年(平成27年)3月末までに、全国約1400のすべての健康保険組合が「データヘルス計画」を国に提出しており、平成29 年度までの3年間を第1期として、各々の「データヘルス計画」を実行していく段階に入っています。IMSは、今回これらの保険者をお客様として、「Collabo-Health25(以下CH25)」というデータ分析のツールとコンサルティングによるソリューションを提供し、「データヘルス計画」の効果的な実行を支援しています。弊社がソリューションをご提供させていただいていたお客様の中の4健保が「データヘルス計画のモデル事業」に選定され、具体的な事例構築に関する支援をさせていただき、その評価と実績を踏まえて現在、30以上の健保に我々のソリューションをご利用いただいています。
――保健事業の現場では、どんな課題を抱えていますか。
湯田 今後「データヘルス計画」を推進していくうえで、計画を具体的に実行して、評価を行い、改善していくPDCAのサイクルを継続的に回していく必要があります。規模の大きな保険者や、既に先進的な取組みをしている保険者は、そこにリソースを割いて試行錯誤しながら取組みを進めています。一方で、リソースが限られている中小規模の保険者では、「対応する時間が十分にない」「ノウハウがなく具体的にどうしたら良いかわからない」といった課題を抱えているところが少なくありません。
――そうした課題に向けて、どのようなサービスを提供していますか。
湯田 IMSが提供する「CH25」は、規模の大きな保険者はもとより、十分なリソースやノウハウをもたない中小規模の保険者でも負荷なく簡単に導入でき、かつ保険者が自律的にデータ分析・評価ができることを主眼に置いて開発しました。実際に「CH25」の構築にあたっては、データ活用に対して非常に高い意識を持った保険者と一緒にゼロからつくりあげてきた経緯があり、保険者の現場の声を採り入れて随時アップデートしていることが特徴です。導入も簡単で、最初のセットアップは早くて3日で完了し、導入後はすぐに利用開始することができます。このように、徹底して利用する保険者の視点に立ち、利用している保険者と一緒に成長していることがソリューションの優位性であり、その点に関してお客様から高い評価をいただいています。また、「CH25」は個人情報保護の観点でも、保険者の外部にデータを出さずに保険者の利用環境の中でデータ管理が徹底できることを評価していただいています。
――具体的なデータ分析などの手法についてご説明ください。
湯田 例えば、「CH25」を活用いただき、データヘルスのモデル事業にも選定されたオートバックス健康保険組合様のケースでは、健康診断データなどをもとに健保加入者をグリーンゾーン(正常値)、イエローゾーン(境界値)、レッドゾーン(要医療値)、ブラックゾーン(緊急値)の4色のゾーンに階層化し、全加入者の健康リスクと対策結果を「見える化」して、優先度に応じたアプローチを行いました。
図1 IMSのデータヘルスに対する取組み
初年度は、緊急に受診を要するブラックゾーンの対象者のリスク撲滅を優先し、二次健診案内や緊急面談、通院モニタリング等を実施した結果、ブラックゾーンでの未受診者をゼロにすることができました。
一方で、イエローゾーンの対象者には特定保健指導や3日間の健康研修を実施して生活習慣の意識改革を促し、健康相談の件数の増加につながりました。
IMSではこのように、「どのような基準で健康リスクのセグメント分けを行うか」「どのゾーンへの対策を優先させるか」「どのような施策を実施していくか」など、保険者のニーズや抱える健康課題に関してお話をしながら、加入者の健康状況に沿ったアプローチを効果的に実施できるようコンサルティングサポートを行っています。
さらに今後は「実行」のフェーズになってきますので、施策を実施した後の効果測定や、改善に向けたアドバイスなど、まさにPDCAサイクル全体のサポートをしていくことになります。
――このようなソリューションを提供できるIMSの強みとは?
湯田 IMSは日本で50年にわたって医療データ分析のノウハウを蓄積しており、近年ではITを活用したソリューションサービスを幅広く展開しています。そうした医療関連の専門性やヘルスケアITに関する知識とともに「いかにお客様視点に立ち医療関連データからエビデンスベースのインサイトを引き出すか」を追求してきた長年の経験が、保険者へのソリューション開発・提供に活かせているのではないかと思います。
また、保険者が「データヘルス」のPDCAのデータ分析から、実行、評価、改善までの一連のサイクルを協業パートナーと効果的に連携しながら、コンサルティングを含めてワンストップでサービス提供できるところもIMSの強みといえます。
――今後の取組みなど、展望がありましたらお聞かせください。
湯田 「データヘルス」の推進支援とあわせて、より幅広い範囲で予防医療・健康管理を支援できるプラットフォームを構築していけたらと考えています。
今後膨れ上がる医療費を最適化していくためには、最終的には健保加入者およびその家族のヘルスケアに関するリテラシーがより向上し、自らの健康データを管理していくことが必要になってくると考えています。更に今後IT技術が発展し、より精度の高いモバイルの健康管理アプリケーションやウエアラブルデバイスが普及していくと、これまで以上に医療・健康管理に関するビッグデータが蓄積される環境になることが想定されます。このような環境変化の中で保険者が核となり、事業主、医療従事者およびサービス提供企業と効果的にコラボレーションをすることで健保加入者およびその家族にデータに基づいた効果的な働きかけをすることで疾病予防・重症化予防等をし、健康長寿社会を実現していくことを支援できるようなプラットフォームを提供できたらと考えています。
図2 IMSが実現を目指す医療貢献
これまでと同様に、IMSは医療・ヘルスケア分野に対してデータ分析、コンサルティング、ITを活用することで医療の発展および医療の最適化に寄与することが事業のベースとなっており、今回の「データヘルス」に関するサービス提供もその一環となります。今後、保険者に限らず、保険薬局、病院等、幅広いヘルスケアのステークホルダーに対して、医療ビッグデータ時代のソリューションを幅広く提供していけると自負しています。