パイオニア常務執行役員 モビリティサービスカンパニーCEO 兼 グループCISOの細井智氏(撮影:内海裕之)

 消費スタイルの「モノ」から「コト」への変化が叫ばれて久しいが、同じように製造業も「モノ(製品)」から「コト(サービス)」へのシフトが続いている。そんな中、パイオニアが進めているのが、モビリティ領域の課題を「モノ×コト」で解決するソリューションカンパニーへの変革だ。カーナビゲーションなどのカーエレクトロニクス分野をリードしてきたパイオニアが目指すモビリティ分野の課題解決とはどんなものなのか。同社の常務執行役員でモビリティサービスカンパニーCEO兼グループCISOの細井智氏に話を聞いた。

「モノ+コト」ではなく「モノ×コト」のビジネスモデルへ

――細井さんは2年前の2022年1月に日本マイクロソフトからパイオニアに転職されましたが、移籍の決め手は何だったのでしょうか。

細井 智/パイオニア常務執行役員 モビリティサービスカンパニーCEO 兼 グループCISO

1971年8月4日生まれ。1996年3月中央大学卒業後、日立ソフトウェアエンジニアリング入社。その後、1998年日本マイクロソフト、2006年ジャストシステム、2008年日本マイクロソフト、2017年同社パートナー事業本部技術統括本部 業務執行役員、2019年同社 デジタルトランスフォーメーション事業本部 執行役員 常務、2020年同社パブリックセクター事業本部 執行役員 CTOを歴任し、2022年1月パイオニア入社。常務執行役員 モビリティサービスカンパニーCEO 兼 グループCISOに就任し、現在に至る。
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細井智氏(以下敬称略) 私は大学卒業後、1996年に日立ソフトウェアエンジニアリング(現日立ソリューションズ)にシステムエンジニアとして入社し、1998年に日本マイクロソフトに転職しました。以来、四半世紀近くをマイクロソフトで過ごし、主にDX事業本部のトップとして、メーカー、流通、金融ほか、さまざまな業界でDX推進のお手伝いをさせていただきました。

 パイオニアとの縁は、かつてシステムエンジニアだった時期に担当した経験がありましたし、同社がハードウェアとサービス事業を軸にしつつ、モビリティの世界で新たな方向にかじを切る選択をしたことからお誘いを受けました。もちろん、私が協力できることもたくさんあるのではないかと考えたのが転職を決めた一番の理由です。

 また、私は個人的にクルマや音楽が好きなのですが、カーナビはずっとパイオニアの「carrozzeria(カロッツェリア)」ユーザーでしたし、一消費者としてパイオニア製品には愛着を持っていました。そういう思い入れの熱量は、仕事をしていくうえで重要な要素でもあります。

――実際にパイオニア入りしてみて、どんな問題意識を持ちましたか。

細井 2019年にカンパニー制を導入し、すでにモビリティサービスカンパニー(MSC)が立ち上がっていましたが、これまではハードウェアを主体にしてサービスを展開する意識が強すぎたのかな、という点は見て取れました。パイオニア製品を販売したうえでのサービスがメインで、サービスはあくまで製品をサポートするためのものでした。

 しかし、それでは「モノ×コト」ではなく「モノ+コト」の域を出ないのです。そうではなく、サービス主体で考え、そのサービスがハードウェアに対して影響力を与えるようなビジネスモデルに変えていき、ハードとソフトの相互で力を持たないとモノ×コトにはなり得ません。入社後、最初に感じたのはその点でした。