経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課・課長の内田了司氏(撮影:酒井俊春)

 DXを推進するには、経営者も含めたDX人材の育成が必要不可欠である。そこで、国は年間45万人のDX人材育成を実現すべく、「デジタルガバナンス・コード」や「デジタルスキル標準」などのガイドラインを策定し、後押ししている。リスキリングの促進や実践的な学びの場の創出、能力・スキルの見える化を実現するためのデジタルスキル標準を策定した経済産業省の内田了司氏に、同ガイドラインの活用方法も含め、DX人材育成に必要な取り組みを聞いた。

DX戦略を描き、必要なDX人材を「定義・分類」する

「DX人材の育成は3つのステップで進めることが望ましい」と内田氏は言う(下の図)。

・〈STEP1〉自社のDX戦略を踏まえて、DX推進に人材必要な人材を分類・定義

 まず、DX戦略を描くことが大前提となる(DX戦略の策定においてはDX経営の要諦集とも称される「デジタルガバナンス・コード」や、優れたDXの取り組みを行っている企業を選定した「DX銘柄」などが参考になる)。

 DX戦略が描けたら、実現に必要な人材やスキルを定義していく。例えば、外国人向けアプリの開発をするのであれば、外国人が好むアプリのUI(ユーザーインターフェイス)/UX(ユーザーエクスペリエンス)を理解している人材やアプリ開発を行えるエンジニア、といった具合だ。

内田 了司/経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課・課長

1998年通商産業省(現経済産業省)入省。知的財産政策室、大臣官房グローバル経済室、通商機構部参事官室等を経て、2015年内閣官房まちひとしごと創生本部事務局ビッグデータ室長(RESAS開発)、2016年在アメリカ合衆国日本国大使館参事官、2019年デジタル通商交渉官兼デジタル通商ルール室長(WTO電子商取引交渉、日EUEPA見直し、日英EPAにおける国際的なデータ流通ルールの立案、有志国間連携の推進)、2021年国際経済課長(G7・G20)に従事。2022年7月より現職。

 だが、新規事業のようにこれまで取り組んだことがないことの場合はどのような人材やスキルが必要なのかを定義するのは、たとえ大企業であっても簡単なことではない。

 デジタルスキル標準(以下、DSS)は、まさにこのような背景から策定されたガイドラインである。

 これは「DXリテラシー標準」「DX推進スキル標準」の2つから構成されており、DX人材やスキルの定義においては後者の「DX推進スキル標準」(企業がDXを推進する専門性を持った人材を育成・採用するための指針)が活用できる。

 DX推進スキル標準では、人材については「ビジネスアーキテクト」「デザイナー」「ソフトウェアエンジニア」「サイバーセキュリティ」「データサイエンティスト」の5つを定義している。