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 不確実性が増し、トップダウン型の組織が時代にそぐわなくなった今、何が組織の命運を握るのか。本連載では、元海上自衛隊海将である著者が、組織の8割を占めるフォロワー(部下)に着目し、上司の「参謀」に育て上げるために必要な考え方、能力について解説した『参謀の教科書』(伊藤俊幸著/双葉社)から、一部を抜粋・再編集。リーダーシップ一辺倒の組織を、自立型の臨機応変な組織に改革するカギを探る。

 第5回目は、組織全体の力を引き出すために、上司に積極的に働きかける「フォロワー」のあり方について解説する。

<連載ラインアップ>
■第1回 元海上自衛隊海将が伝授、「最強の部下」を作り、組織を激変させる方法
■第2回 防衛大学校初代学長が、学生たちに繰り返し訴えた「理性ある服従」とは何か?
■第3回 自衛隊で明確に使い分けられている「号令」「命令」「訓令」の違い
■第4回 ポテンシャルある若者を、2割の幹部に鍛え上げる自衛隊の仕組みとは?
■第5回 カーネギーメロン大学教授が提唱、組織の力を引き出すフォロワーシップ理論(本稿)

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正しいフォロワーシップとは

 参謀を育てる重要性は軍事組織に限った話ではなく、時代の要請と言えます。

 Volatility(ボラティリティ/変動性Uncertainty(アンサーテインティ/不確実性Complexity(コムプレキシティ/複雑性Ambiguity(アムビギュイティ/曖昧性という4つの言葉の頭文字を並べたVUCA(ブーカ)と呼ばれる不確実性の現代において、健全で活力のある組織運営をするためには、自律した人間が集い、共通の目的のために主体的に協調して行動するスタイルでないと、その変化のスピードに取り残されることになってしまいます。

 しかしながら、従来の組織論は常にリーダーシップを軸に考えられてきました。カリスマ型、強権型、人情型などリーダーのタイプはさまざまありますが、共通するのは「上が働きかけることで下が動く」という発想です。

 それに異を唱えたのがカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授でした。リーダーシップだけにこだわる組織は組織全体の力を引き出せないとして、1992年に刊行した『The Power of Followership (邦題:指導力革命――リーダーシップからフォロワーシップへ)(牧野昇訳、プレジデント社刊、※絶版)という本で「フォロワーシップ理論」を提唱しています。

 リーダーシップとは「リーダーとしてのあり方」のことで、フォロワーシップとは「フォロワーとしてのあり方」のことです。そして、ケリー教授は、「積極的に上司に働きかけを行なうことが正しいフォロワーシップだ」と言ったのです。