最近よく目にするJ.Scoreのブランド広告(2019年9月筆者撮影、汐留の日本テレビ前で)

(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役)

「ねぇAI。押して、私の背中」
「フィンテックで、人に勇気を」

 記録破りの猛暑もようやく一段落した8月の下旬、東京の地下鉄メトロ線内で、二階堂ふみが出演するJ.Score(ジェイスコア)社の動画広告に目を奪われた。

(参考)J.Scoreブランドの動画広告「夢への疾走編」

 J.Scoreは、2016年11月にみずほ銀行とソフトバンクの共同出資(出資比率は50%ずつ)により設立されたフィンテック(FinTech)関連のベンチャー企業だ。

 かつて広告代理店のブランド戦略部門で働いていた著者からすれば、J.Scoreがいかに自社の成長戦略のためとはいえ、既存の金融業の危機がたびたび取り沙汰されるこのタイミングで、リスクを取ってまで顧客の奪い合いに火をつけるキャンペーンを立ち上げることに瞠目せざるを得なかったのである(注)。

(注)J.Scoreは2017年6月の設立期にスプツニ子!をブランドキャラクターに起用して小規模だが最初のブランドキャンペーンを実施している。

 J.Scoreがケンカを売る相手はもちろん、既存のキャッシングサービス業界、すなわち親会社のみずほ銀行を含むメガバンクのカードローン部門やメガバンク傘下の消費者金融サービスだ。

 J.Scoreの最大の武器でもあり、既存のキャッシングサービス業界との決定的な差別点でもあるのが、AIによる「信用スコア」の導入であることは言うまでもない。欧米や中国での導入からはだいぶ遅れてはいるが、J.Scoreの本格稼働で日本でもようやく本格的な「信用スコア」を活用する金融ビジネスが立ち上がった。

 今回はJ.Scoreのケースと、J.Scoreがベンチマークにしている(はずの)アリペイ(Alipay:支付宝)の「芝麻信用」(ゴマ信用)を話題の中心にして、「信用スコア」が持つ破壊力について、マーケティング視点から考察を深めていきたい。

 IoT時代、<融資や信用取引のルール>が変わる。

【破壊力その1】「AIスコア・レンディング」による低金利と即日融資

 J.Scoreの最大の特徴、AIを駆使した独自の「信用スコア」を活用した融資スタイルは「AIスコア・レンディング」(Lending:貸付)と呼ばれている。