自宅のソファでくつろぎながら、スタジアムの熱狂を味わうことができる。そんな体験を可能にする「VR観戦」が、国内でも少しずつ広がりを見せている。

7月25日、SupershipとKDDIはVR観戦プラットフォーム「XRstadium」をリリースした。提供コンテンツ第一弾として、日本プロ野球パシフィック・リーグ2018年シーズンにおける7月27日以降の試合を「パーソル パ・リーグTV VR」(パシフィックリーグマーケティングが運営)としてリアルタイムライブ中継、およびビデオ配信している。

筆者もさっそく7月27日、第一弾配信の「北海道日本ハム VS オリックス」戦を「Oculus Go」にて観戦してみた。

XRstadiumは、自宅などのイベント会場外からでも、スポーツや音楽イベントにリアルタイムで参加する楽しみを味わうことを可能にするVRプラットフォーム。あらかじめPCやスマートフォンで観戦したい試合を購入しておき、VRアプリを起動。指定の時間になったらホーム画面から購入した試合を選択することで、VR空間上で観戦できる。

XRstadiumのホーム画面(画像はOculus Goでのスクリーンショット)

「パーソル パ・リーグTV VR」では、VR観戦用に撮り下ろした複数のカメラアングルが用意されている。ユーザーは自身のタイミングで自由にアングルを切り替えて観戦できるほか、試合速報や選手情報、シーズン成績などの情報を閲覧することができる。今回の試合の場合、バックネット側からのアングルが一番見やすいと感じた。

(画像はプレスリリースより引用)

また、家族や友人とユーザーIDを交換しておけば、離れた場所にいても音声で会話しながら観戦することが可能となる。その他、画面右側に表示されているウィンドウでは、音声認識システムを用いたテキストチャットで、同じ試合を観戦しているユーザー同士交流できる。このチャットの音声認識、充分実用に足る精度に感じた。現段階では各発言にID等の表示は無く、特定のユーザーによる発言を非表示にするような機能は無いようだ。

以下の動画は、VR空間内で見ることができるチュートリアル動画と同内容のもの。

XRstadiumのご利用について

XRstadiumアプリのダウンロードは無料だが、一試合視聴するのに500円かかる。この価格設定は球場に足を運ぶことに比べれば断然安いが、現状の体験感ではやや高いと感じる方の方が多いかもしれない。

理由としては、まず選手たちが「遠い」と感じる点が挙げられる。普段から球場の観客席からの眺めを見慣れている人であればリアルに感じるポイントかもしれない。しかし、今回配信された映像は3D(立体)ではない上に、解像度も高いとは言えない。そういった面で、リアルさよりもテレビ中継的に捉えてしまうと、正直どの角度から見ても「遠い」と感じてしまうのだ。

せっかくならテレビや観客席からでは見えない空中、鳥瞰、ピッチャー視点、キャッチャー視点などVRならではの視点があると、もっと楽しいものになりそうだ。

一方、ソーシャル面において音声での交流を知り合い間に限定した点は、後述する「Oculus Venues」等とは大きく異なるポイントであり、利点でもある。コンテンツの種類や視聴者数によっては、遠隔から観戦しているユーザーの歓声も共有したいというニーズも出てくるかもしれないが、現状はこの切り分け方が無難だろう。チャット機能に関しては、Twitterなど既存のSNSと連携が取れるようになれば可能性が広がりそうだ。

度々映像が止まる点や、試合情報の更新が遅れる点は個々人の通信環境によるかもしれないが、テキストチャットでも度々「映像が止まった」というコメントが散見されていたので、サービスが不安定な要素もあるのだろう。気になる点は少々あるが、OculusGo、Gear VRに加えてAndroid 5.0以上のVRゴーグルに対応、今後もMirageSoloやDaydreamViewにも対応予定ということで、「対応デバイスが多い」という強みもある。今後の進化に期待したい。