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徹底解説!見えない敵、花粉・ニオイ・菌を攻撃する「ナノイー」徹底解説!見えない敵、花粉・ニオイ・菌を攻撃する「ナノイー」

彦根工場彦根工場

パナソニック製のエアコンやドライヤーなどに搭載されている「ナノイー」。名前と概要くらいは知っているという人も少なくないだろう。しかし、そのしくみや性能を詳しく知っている人は、残念ながら多くないようだ。今回は、パナソニックで「ナノイー」を開発する彦根工場に伺い、「ナノイー」の開発に携わる大江純平氏に詳しく解説いただいた。その概要やメリットを紹介する。

「ナノイー」って何だ?

パナソニック株式会社 アプライアンス社
技術本部 ホームアプライアンス開発センター
開発第四部 第一課 主任技師
大江 純平

「ナノイー」とは、空気中の水に高電圧をかけることによって発生するナノサイズの水イオンだ。名前の由来は、ナノテクノロジーの「nano」と、電気を帯びたという単語「エレクトリック」の「e」からきている。「ナノイー」は、さまざまな物質に作用しやすい「OHラジカル」を含んでいる。OHラジカルは非常に不安定で、菌・ウイルスや花粉などさまざまな物質と反応して、H(水素)を奪う。Hがなくなると本来の構造が変容してしまうため、カビや花粉など人間に悪い作用をもたらす物質を無害化できる。一方、Hを取り込んだOHラジカルはHと結合しH2O、すなわち水となり、人間に害はもたらさない。

OHラジカルによる対象物質の変異

このように、OHラジカルに様々な効果があることはわかっていたが、製品化にあたっては大きな課題があった。OHラジカルは普通に空気中に放出すると、簡単に物質と反応してしまい、あっという間に消失してしまう。そのため、そのままでは空間に行き渡らせることができなかった。そこで、パナソニックが考えたのが水に包むこと。これによりOHラジカルの寿命が延び、部屋中に行き渡らせることが可能になったのだ。

「ナノイー」の構造図 (水にOHラジカルが包まれているイメージ図)ナノイーの構造図 (水にOHラジカルが包まれているイメージ図)
除菌イメージ除菌イメージ

一般的な空気イオン(マイナスイオン)の寿命は、数十秒~100秒だが、「ナノイー」の寿命は約6倍の約600秒と長寿命。また、マイナスイオンは空気中の酸素や窒素と簡単に結合するのに対し、「ナノイー」は水に包まれているため水に溶けにくい酸素や窒素と結合せず、ターゲットとする花粉やカビを直撃しやすい。

※ パナソニック調べ

気流解析による飛散軌跡

カビやウイルス、臭気など7種の物質に効果。採用例も続々

「ナノイー」は、臭い、菌・ウイルス、PM2.5、花粉、その他動物のフンやダニの死がいなどのアレル物質、カビなどと反応して発生を抑えるとともに、美肌や美髪にも効果がある。ではHを奪って物質を抑制させるのに、なぜ肌や髪を整えるのだろうか。美肌の場合は、OHラジカルによって皮脂が親水化。それを続けることで保湿力が高まり、肌のキメを整える。

実際に脱臭効果の実験を見せてもらった。カレーの臭いがする液体を同量垂らした2枚の布片を、同じ大きさのプラスチック容器に入れる。片方は単なる容器で、もう片方には「ナノイー」発生装置がセットされている。装置を作動させてからわずか30秒で発生装置がある容器に入れた布片を嗅いでみると、まったくカレーの臭いはしなかった。もちろん、もう片方は変わらずカレーの臭いがしている。小さな容器なので部屋全体となるとこれほど高速にはできないが、その威力は相当だ。

「ナノイー」は、JR山手線の新型車両やJR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」を始め、首都圏や京阪神を走る私鉄各社の新型車両に続々と採用されている。また、自動車ではトヨタ、スズキ、JLRの多くの車種で採用。快適な空間の創出に貢献している。車両だけではない。病院や学校・保育園、老人ホームなどの公共施設や、ホテルや飲食店、さらにはエレベーターなど、様々な公共空間で利用されている。

「ナノイーX」へ進化、さらに高濃度に

「ナノイー」は2003年空気清浄機に搭載されて世の中に初めて登場。その後応用範囲を広げつつ、改良が続いている。その最中に、大江氏は入社した。学生時代全く異なる分野の研究をしていた大江氏は、「ナノイー」のチームに配属となったとき驚いたという。「正直なところ、当初は目に見えないので効果を確信できませんでした。しかし、実際に取り組んで実験を繰り返すと確かに効果があるとわかり、もっと進化させたいと思うようになりました」と振り返る。

そして、大江氏を含むチームのメンバーは小型化に取り組み、放電部分の見直しを行った。そもそも放電は、電極間にかかる電位差によって電気を放出する。当初の「ナノイー」発生装置の放電は、ペルチェ素子という電圧をかけると片側が冷え、片側が温まるという半導体を使って「ナノイー」を霧状で発生させる霧化電極を冷やしながらマイナスの高電圧をかけ、対極板をゼロとすることで電極間に電位差をつけて放電させていた。しかし、ペルチェ素子は高電圧を加えると壊れてしまうため、霧化電極とペルチェ素子の間に絶縁体を入れていた。そのため熱効率が悪く大量のパーツが必要で、小さくすることが難しかった。そこで、発想を転換させ、霧化電極の電位をゼロとし対極板にプラスの高電圧をかけることにした。霧化電極から見るといずれも対極板は電位としてプラス方向にあるわけだ。つまり、電位差は変えずプラス方向にずらすことで、霧化電極に高電圧をかける必要がなくなった。その結果、霧化電極とペルチェ素子の間の絶縁体が不要になり、熱効率も上がり小型化に成功した。この発想の転換を生み出したのは、多様性である。大江氏は、「研究、開発、営業、企画、知財、生産技術など多彩なメンバーを集めて検討会を行いました。多様な人々が集まってディスカッションするなかで、発想の転換が生まれました」と語る。

放電検査の様子放電検査の様子

その後、性能アップのため、放電方式を見直し。従来先端部分のみから放電してOHラジカルを生成していたのを、より広い領域で放電させることで大量のOHラジカルを生成できるようになった。その結果一気に放出量が10倍に。2016年のことである。そこで、10倍の意味を込めて、新たに「ナノイーX」と命名した。さらに現在は「ナノイーX」の2倍、つまり「ナノイー」の20倍にまで放出量が増えており、高濃度な「ナノイーX」と呼ばれている。高濃度になることで、なんと油分まで分解。パナソニック史上最高濃度なる毎秒約9兆6000億個のOHラジカルを発生させることで実現している。

ドライヤー用の「ナノイー」は、空間の浄化とは目的が大きく異なるため、基本原理は同じながら電極も放電状態も異なる。大江氏は、「皮膚や髪に合わせて、酸性成分や水分量を調節しています。こちらも当初の「ナノイー」から、高浸透「ナノイー」へと進化しています」と語る。このように「ナノイー」は、応用分野に合わせてチューニングすることで、様々な分野に対応が可能だ。まだまだ応用の可能性を秘めていると言えるだろう。

最後に大江氏は、「海外の評価機関での実証も進んでおり、今後グローバル展開も進展する予定です。世界的に衛生意識も高まっており、空気で困っている世界中の人を助けていきたい」と締めくくった。

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