【“スイス・バンキング”を育てたオープンな経済】

 スイスでは「プライベート・バンカー」が正式に登録された呼称となっており、その権利はスイス・プライベート・バンカーズ協会(SPBA)によって保護されている。プライベート・バンカーを名乗れるのは、この協会に加盟する14の銀行のほか、プライベート・バンキング業務の基準を満たしている銀行だけ。長年の歴史と伝統を誇るその呼称は、世界中の顧客からの厚い信頼を担っている。
 スイスのプライベート・バンキングが、このように世界的な地歩を築くに至った理由をあらためて整理しよう。
 まずは特定の勢力に与しないスイスという国の中立性と政治的安定。諸国間のトラブルに巻き込まれにくく、従って政情が長期的に安定していることは、大切な資産を委ねる上で大きな安心材料となる。赤十字国際委員会をはじめ、この国に本部を置く国際機関が多いのも理由は同じ。王侯貴族であれ新興市民であれ、顧客は顧客として遇してきた伝統的なビジネススタイルも、元を辿ればこの国に根付く中立の精神と無関係ではない。
 資産運用の根幹に関わる要素として、自由主義と自己責任原則が国民に浸透していること。今も直接民主制が行われ、国民の発議による立法も可能なこの国の政治制度は象徴的といえる。