【“スイス・バンキング”を育てたオープンな経済】

 オープンで国際的な国民性。スイス人は教育熱心で、大半の国民が複数の言語を話すマルチリンガルであるため、他国からのヒト・モノ・カネをオープンに受け入れ、また自分たちも積極的に他国に乗り出していく。この国の銀行が着実に事業規模を拡大できたのも、その国民性によるところが大きい。事業機会が限られる国内を飛び出し、ビジネスと手を携えて積極的に国外基盤を広げることで収益を得てきたのである。
 伝統的な機密保持もスイスの金融センターとしての地位確立に一役買っていると言えるだろう。スイスの金融機関は、犯罪によって得た資金であると判明した場合などを除けば、原則として顧客情報を明かさない。ビジネスに徹するがゆえの機密保持は、17世紀にはルールとして確立し、1934年には法制化されている。
 ほかにも金融機関をサポートする法規制が整備されていること、前述の鉄道など交通網も整備されて外に開かれた経済であること、独立した通貨政策により通貨(スイスフラン)が「金より堅い」といわれるほど安定していること、金利水準が低いことなど、銀行ビジネスの成長を支える好条件がいくつもそろっているのがスイスという国なのだ。