その結果として現れたのが、できる限り無駄なものを買わないように来店前に購入リストを作成する動きであるとする。消費者の多くが来店前にすでに各店、各品の価格を入手した上で買物をする。そのため、これまでは耐久消費財等で重用されてきたICT(Information and communication technology/SNS、口コミサイトなど)の活用が、消費財においても広がっており、オンライン・クーポンのサイト活用も広がっている事象が出て来ている。結果、価格情報に偏重し、メーカーからのカテゴリー、ブランド価値の提案が困難になり、ジレンマに陥っていると結論づけた。
株式会社インテージ マーケティングソリューション第1ユニット シニアアナリスト 江島賢一郎 氏 次に日本の場合、米国と違い「価格要素以外の提案チャンスあり」というのが結論だとした。これまでにも消費税導入、山一証券や拓殖銀行の破綻など深刻な経済危機があったものの、消費は下降しながらも、なお堅調に推移していた。しかし、現況を見ると、低価格競争が激化し、ICTの普及により、消費者が安くてもいいものを識別できるようになったため、それが必須条件となってきている。その象徴がPB(プライベート・ブランド)商品の拡大である。PB商品とNB(ナショナル・ブランド)との比較において、消費者の味や品質に対する知覚品質差は、約半数が変わらないと知覚していることがわかった。ただし、実際の購買シェアはまだ12%にすぎない。日本においては、米国と違い、このズレが重要でNB商品も価格以外の新たな提案、発信によって価値の創出が可能で、拡販の余地は十分に残されていると続けた。ラインナップの充実で選ぶ愉しさの強調、業界コラボレーションによる新たなシーン、オケージョンの提案、素材や味、安全性の訴求など、日本においては、「店頭でこそ」価格以外の評価軸を消費者に再認識させることが重要。NB vs PBの構図ではなく、消費者に期待させる「訴求」と「値ごろ感の演出」をメーカーと小売のコラボにおいておこなうべきであると結論づけた。
 最後に中国の結論としては、JAPANブランドとして「今なら内陸に、オポチュニティあり」と断言した。今回、特に、中国は沿岸と内陸部に調査を入れたが、内陸の伸展はめざましく、都市部との格差が縮まっていることが明らかになった。また、内陸部の中間層の場合、購買力はあるが、JAPANブランドのイメージが沿岸部ほど知られていない実情が鮮明になった。食品では特に、品質への関心が高く、安心・安全のために特定銘柄を指定するなど、日本より過剰なほど。すなわち、高い安全性を誇る日本の食品は、そうした彼らに受け入れられるのは必定で、まず品質と安全を周知してもらうことが先決だと江島氏は語った。そのためメーカーと小売とのタッグで、試食や店頭配布などの手法が効果的であると考えられるという。ただし、勝機はいま現在、何よりスピードが肝心だと。じっくりでは間に合わない、「今こそChange」という言葉で日米中の消費者比較の講演を締めくくり、聴衆にとっては、グロバール市場の戦略立案には大変役立つ内容となった。

電通とインテージがマーケティング支援の新しいソリューションを開発 ミニセッション「インテージと電通の共同ソリューション開発」
株式会社電通 コミュニケーションデザインセンター 加藤剛輔 氏
株式会社インテージ マーケティングイノベーションユニット ソリューション企画1部
高山佳子 氏

 2010年4月をめどに、インテージと電通は、企業の事業課題、マーケティング課題の解決を支援する新しいソリューションを共同開発し、両社のクライアント企業に提供すると発表した。
 両社が、この度の業務提携に至るにあたっては、その背景に大きな要因が2点あげられる。まず、第1点としては、インテージグループは、これまでに、新しい「業界別プラットフォーム」の確立を目指し、新規事業の開発や情報サービスのネクストステージに挑戦してきていること。そして、電通グループは、新中期経営計画「 Dentsu Innovation 2013」に基づいて、企業と生活者の接点に立ったより豊かな付加価値の創造に向け、様々な施策を推進中であること。第2点としては、経済環境の急激な変化に伴い、生活者のライフスタイルも急速に様相を変えたことで、企業活動におけるマーケティングの重要性はより一層高まってきていることなどがあげられる。情報の種類、入手ルートなどの多様化、複雑化が進行する現状において、企業にとっての有効な情報の収集と分析、マーケティング課題の特定、課題解決のカギとなる要因の分析、課題解決策のパフォーマンス向上の基盤となる「マーケティング・インテリジェンス」が重要な課題となっているわけである。
 このような背景から、マーケット・インサイトと情報分析力に長けたインテージグループと、ターゲット・インサイトと施策実行力に長けた電通グループの2社は、コラボレーションによる新しいソリューションの共同開発を目指すという。ソリューション開発の狙いは、さらなるサービスのネクストステージを切り開き、クライアント企業の事業・マーケティング活動における「意思決定精度の向上」、「スピードと業務効率の向上」、「実効性の高い解決策の実行」に対して、より強力なサポートを目指していくと発表した。
 具体的には、共同ソリューションの第1弾として、両社が保有する基幹データ、マーケットで現在起きていることを語る「インテージ消費者パネル」のデータと、生活者の興味関心や情報への接触動向を語る「d-camp」のデータとの疑似シングルソース化を図り、クライアント企業の事業戦略、マーケティング戦略、コミュニケーション戦略プランニングのためのインサイト提供を統合的に支援していく、という。
 ミニセッションでは、研究途中の擬似シングルソース化について、実際のデータを用いたビールに関する分析事例が紹介された。
 紹介されたのは、不況下でも好調だったブランドの新規ユーザーをインテージ消費者パネルから抽出し、その人たちがどんな施策に反応しやすいかをd-campで確認することで、各ブランドの施策が効いているのかを検証した事例、各ブランドのユーザー像の違いを明らかにした事例、そしてd-campで聴取している価値感によって生活者をグループ分けし、各グループのビールの購入量や買い方をインテージ消費者パネルで分析した事例などである。
 このように、本来は別々のデータである「インテージ消費者パネル」と「d-camp」とをシームレスに分析できるような統合データを作ることで、ブランド戦略立案や商品開発の仮説作りに生かしたいと考えているという。