富本午之助は、宝暦4年(1754年)に生まれた。 寛延3年(1750)生まれの蔦屋重三郎より、4歳年下となる。 父は、富本節の初代・富本豊前掾(とみもとぶぜんのじょう)だ。 富本節とは、三味線の伴奏による語り物(筋のある物語を節をつけて語る芸能)音楽の一種である「浄瑠璃」の流派の一つである。 午之助の父・富本豊前掾は、本名は福田弾司、初名は宮古路品太夫、前名は宮古路小文字太夫、常磐津小文字太夫というが(早稲田大学演劇博物館編『演劇百科大事典 第4巻』)、ここでは「富本豊前掾」の表記で統一する。 富本豊前掾は、豊後節の始祖・宮古路豊後掾(みやこじぶんごのじょう)の門下とされる(中内蝶二 田村西男