(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト、新領域安全保障研究所リサーチフェロー) シリアのアサド独裁政権を打倒した反体制派組織「シャーム解放機構」(HTS)が注目されている。現在の新生シリアの全権を握った組織だが、前身は一時期、国際テロ組織「アルカイダ」の傘下を名乗っていた「ヌスラ戦線」というイスラム系ゲリラである。したがって、独裁者がいなくなっても、他宗派を弾圧するイスラム過激派による独裁が始まるのではないかと危惧されたのだ。 しかし、そんな懸念を他所に、HTSは人権重視と民主的政権移行を打ち出しており、他宗派や少数民族、さらには戦争犯罪に加担していない旧政権の職員・兵士にまでおよぶ全方位融和方針を