僕の原点は、著作でいうと『10宅論』(1990年、ちくま文庫)です。住宅の神格化、例えば篠原一男(「住宅は芸術である」と宣言した建築家、1925~2006年)の住宅論があってそれが安藤忠雄(コンクリート打ち放しを日本に広めた建築家、1941年~)に引き継がれていくみたいな構図、個人住宅の神格化みたいな流れをものすごく気持ち悪く感じていて、それを批判したのが『10宅論』だった。なぜ個人住宅を自分の思想とからめてそんなに偉そうに語るんだろうと。 実際には個人住宅の私有というのは、近代の資本主義の中にどっぷり飲み込まれていて、20世紀資本主義の最も効率的な道具としてあった。にもかかわらず、社会に対す