2021年6月14日、イスラエル中部の町クファル・ハバッドのある邸宅で2人の人物が相対していた。スーツ姿の男性は水嶋光一・在イスラエル日本国特命全権大使(当時)。全身黒ずくめのもう1人は、ユダヤ教正統派のラビ、モルデカイ・グルマハ氏。書棚には300年以上も昔の本が並ぶ薄暗い部屋の中で、ロウソクの火が2人の手元のカップに黒光りするヘブライ文字を照らし出す。前代未聞の「茶会」の始まりである。 世界が固唾を飲んで見守るガザでの戦いの背景のひとつに、ユダヤ教とイスラム教、それぞれの宗教が存在することは知られている。ユダヤ教およびユダヤの文化とはいかなるものなのか。かつてイスラエルに留学し、かの地の人々